トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建設経済新聞社
2021/06/08

【京都】京都市が行財政改革計画案 投資的経費を年170億円に抑制 産業用地創出など成長戦略も

 京都市は7日、令和3年度から7年度までの5年間を計画期間とする行財政改革計画案を発表。財政運営の必達目標として「令和7年度末に公債償還基金の残高1000億円以上の確保」を掲げ、「投資的経費の年平均170億円への抑制」などの取組を示した。直近の令和3年度から5年度の3年間を集中改革期間に位置付け。早期に財政効果の発現が見込める歳出の見直しや受益者負担の適正化などの改革に集中的に取り組む。
 市は、行財政改革推進本部会議に財政改革チーム、成長戦略・資産活用チーム、業務改革チームを設置した。本部長の門川大作市長は「市の財政は収支不均衡が長く続き、財政改革は待ったなし。このままでは10年以内に財政破綻しかねない。改革の先送りは許されない」「必達目標の達成なしに未来はない」「成長戦略を通じて、経済活性化につなげ、担税力の強化を図る」などと述べ、幹部職員らに対し、「改革案について、パブリックコメントで市民や関係団体等の声をしっかり聴いてもらいたい」とし、不退転の覚悟の共有を訴えた。
 収支の不均衡のため、これまで市は、将来の借金返済に充てる公債償還基金を取崩すなどの特別な財源対策を講じてきたが、公債償還基金の計画外の取崩しを、令和15年度までに脱却(取崩しゼロ)し、基金の枯渇回避する。
 令和15年度までの早期に脱却するため、歳出改革、受益者負担の適正化等により、取崩し必要額を令和7年度に160億円以下とする。その上で、一般財源収入の増加160億円を目指し、今後10年以内のできるだけ早期に、都市の成長戦略や資産の更なる有効活用等により、令和元年度予算の水準、約4430億円まで回復させることによる70億円の増加(令和7年度見込み4360億円)に加え、更に100億円の増加を目指す。
 投資的経費は、公共施設等の老朽化対策にかかる費用の増大等により200億円規模で推移することが見込まれる中、事業の精査を徹底し、直近5年間(平成28年度〜令和2年度)の平均である年170億円に抑制するとともに、公共下水道事業への出資金を休止し、投資的経費・公債費・公営企業等への繰出金の合計の上限を令和3年度予算並みの1350億円程度とする。
 将来の公債費の低減では、令和4〜7年度の予算編成において、投資的経費の市債の発行額の上限を直近5年間(平成28年度〜令和2年度)の平均から14%抑制した年平均380億円(調整債を含めると400億円)とすることにより、令和7年度末の臨時財政対策債を除いた実質市債残高を令和3年度末(見込み)の8722億円以下に抑制する。
 行財政改革計画案の主な取組は、▽民間活力の活用、民営化の更なる推進(クリーンセンターにおける焼却プラントの運転監視業務等の段階的な民営化、公共土木施設の一元管理に伴う除草や樹木剪定などの民間委託の推進、保育所の民間移管、道路・公園等の利活用の推進(新たなニーズにこたえる道路利用の検討や産学公民の連携による柔軟な公園運営の推進)、崇仁地区における地域活性化の推進▽PFIやPark−PFI等の多様な公民連携手法、資金調達手法を用いた効果的・効率的な事業推進(民間活力を活かした都市基盤整備として東九条地区、桃陵団地の再整備など)▽指定管理者や地方独立行政法人を活用した、より柔軟で合理的な運営の推進(京北森林公園、森林文化交流センターの活性化、市営住宅のより効率的な管理運営手法の検討)▽組織の再編・合理化等(まち美化事務所の7事務所から6事務所への再編、土木事務所とみどり管理事務所の統合・機能強化)▽学校・幼稚園統合▽庁舎施設等のLED化等による光熱水費の削減▽民間ビル等の賃料等の削減(市庁舎整備による本庁舎等への集約化等)▽自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進▽府市協調・府市連携(京都市中央卸売市場の再整備、京都市営地下鉄の安全対策等)▽府内市町村との広域連携(消防指令センターの共同運用や消防ヘリコプターの広域的運用など消防力の強化に向けた連携・協力の推進、上下水道事業における広域連携の推進)▽施設のライフサイクルコストの最適化▽公共施設のマネジメントと資産の戦略的な活用(令和3年度中に公共施設マネジメント基本計画を改訂、集約化や複合化の更なる推進(市営住宅の団地再生事業、市営住宅の管理戸数の最適化、福祉系3センターの一体化整備事業、図書館の統合・再配置の検討、学校施設や市営住宅の空きスペースの活用等)、民間移管・存続などあり方検討(男女共同参画センター、健康増進センター、百井青少年村、みさきの家等))▽保有資産の有効活用(未利用地・低利用地の売却・貸付(東部クリーンセンター、こども文化会館跡地、向島中学校跡地、伏見工業高等学校、塔南高等学校、児童福祉センター、地域リハビリテーション推進センター等)、都心部学校跡地の活用、京都市立芸術大学移転整備後の活用)▽自動車運送事業特別会計・高速鉄道事業特別会計(バス・地下鉄)において、令和3年度に中長期の経営計画の策定▽水道事業特別会計・公共下水道事業事業特別会計(下水道事業の企業債元金償還金に対する市の財政(一般会計)からの繰入金(出資金)を令和7年度まで休止、令和4年度に中期経営プランの策定)等。
 また都市の成長戦略の例として、向日市地域での都市開発を見据えた多様な都市機能の適切な配置・誘導や、宇治市域と一体となったにぎわいと魅力あるまち並みの形成など、近隣都市との連続性・一体性を考慮した都市計画の見直し・民間投資の誘導、市街化調整区域における産業用地の創出、空き家の活用・流通への支援策の充実、SDGs(持続可能な開発目標)に寄与するビジネスの支援、地域の脱炭素化の推進、京都市木の文化・森林活性化SGDsの推進、公民連携で公園利活用トライアル事業の導入などを挙げた。
 改革案は、6月12日から7月11日までの1ヵ月間、市民等から意見を募るパブリックコメントを行う。その後、夏頃を目途に確定させる。