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北陸工業新聞社
2021/06/30

【石川】二の丸御殿復元、後世に残る事業に使命感/石川県土木部長城ヶ崎正人氏/コロナ禍でもきめ細かな社会資本整備を

 石川県土木部長の城ヶ崎正人氏は、本紙のインタビューに応じ、コロナ禍でも公共事業の着実な推進、県内建設企業の経営基盤強化、県民共有の財産である金沢城の価値や魅力を格段に高めるため、二の丸御殿の復元整備に向けた取り組みに意欲を示した。

◇◆◇国土交通省から石川県に着任し、土木部長職は2年目となった。
 新型コロナウイルス感染症の影響で市中は大変なことになっているが、私達土木部に求められているのは公共事業予算の安定的、継続的な確保と、地域経済を下支えする事業を着実に実施していくことである。特に「広域交流基盤の整備」、「県民生活の安全・安心の確保」、「県土の魅力を高める」の3点が大きな柱であり、きめ細かな社会資本の整備が県内建設企業の経営基盤強化にも繋がるため、しっかりと取り組みたい。

◇◆◇金沢城復元の総仕上げともいえる「二の丸御殿」。これまでの調査検討の成果を踏まえ、20年度に策定した復元整備に向けた基本方針に沿って、政務や儀礼の場であった御殿「表向」のうち、特徴的な造りや装飾が見られる部分を対象に、段階的に復元整備を進めていく。5月には御殿の正面である玄関や式台周辺における基本設計業務を文化財建造物保存技術協会に委託した。
 これまでに復元整備した門や櫓とは違い、御殿は豪華絢爛な建物。(先行整備する)玄関、式台、虎の間、実検の間についても屋根の構造、内部も部屋ごとに格天井、折り上げ格天井などと意匠が異なり、設計の中で寸法等を確定することになる。史実に沿った建物の再現だが、現在の防火、耐震基準に加え、ご覧いただくための安全性も担保しないといけない。特に耐震性の観点で言えば、御殿は襖(ふすま)や障子で仕切られる部屋が多く壁が少ないことから、設計を進めるにあたり難しい課題が多いが、史実に沿った復元整備を支える現代技術との融合を図り、後世に残る建造物を造り上げることは、技術者にとってはやりがいと使命感を感じる仕事だろうと思う。また、各分野の専門家からなる委員会を設け、技術的な指導や助言を頂きながらさらに具体の検討を進めていくほか、県民の皆さんに御殿を復元整備する意義や、関心を高めてもらえるような情報発信にも努めたい。

◇◆◇北陸新幹線県内全線開業を見据え、次代の基盤となる道路網などの広域交流基盤の整備も推し進めている。
 道路整備には時間がかかるため、『ダブルラダー輝きの美知』構想を踏まえ、着実に推進していくことが重要。南北幹線では(現在事業中の)のと里山海道の4車線化が全線供用すれば、金沢から能登への時間距離の短縮や、人とものの広域交流がより盛んになる。また、22(令和4)年度末までに金沢外環状道路海側幹線4期区間の山側2車線での暫定供用や、加賀海浜産業道路の手取川架橋区間、国道8号と繋がる南加賀道路も完成を目指して工事を促進。一方、東西幹線の七尾外環状道路、かほく東西幹線道路2期区間は5月から工事に取り掛かり、一日も早い完成、供用に向けて整備を進めていく。

◇◆◇建設業は社会資本の整備はもとより、地域経済や雇用を支える基幹産業であると同時に、災害復旧や除雪など、県民の安全・安心の確保のために重要な役割を果たしている。
 コロナ禍にあっても建設業を支えていくため、適時適切な工事発注が重要。担い手の確保に関しては15(平成27)年度から原則、土日を休日とする「いしかわ土日おやすみモデル工事」を導入し、対象工事を徐々に拡大。昨年度は過去最多の1205件で行われた。週休2日制をより一層推進するため、今年度は受注者が実施の有無を選択できる「施工者希望型」のモデル工事について、これまで週休2日の達成時に実施していた労務費や機械経費などの経費の補正を、受注業者が取り組みやすいよう、設計当初から計上することとした。建設現場の生産性向上では、ICT建機を活用するモデル工事に取り組み、昨年度は過去最多の44件で実施。裾野をさらに広げるため、県内9つの地区建設業協会の協力を得ながら、各土木総合事務所単位でICT施工の実績を有する地元業者らによる実演会を行うなど、今後もICTになじみがない建設業者の声も聞きながら普及に努め、より身近なものになればいいと思う。

 じょうがさき・まさと 1992年4月に旧建設省入省、国土交通省水管理・国土保全局砂防部砂防計画課地震・火山砂防室長を経て、2019年4月から県土木部参事、20年4月から現職。鹿児島県出身、福岡県育ち。55歳。

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