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建設経済新聞社
2021/07/08

【京都】官民連携の観光拠点化で調査 SPCが空き家改修、運営も

 国土交通省は6日、令和2年度に実施した先導的な官民連携事業の調査結果を公表した。
 このうち京都関係は、南丹市の「官民連携による公共施設の利活用と観光リノベーション可能性調査」。
 地方の小規模自治体において、財政負担を極力抑えつつ、付加価値の高い観光サービスの展開を図るために必要な公共機能(観光施設)の確保と民間施設を活用し、地域に点在するストックを長期的・包括的に利活用する事業スキーム、対象施設への機能向上に資する投資を継続的に実施するための基金スキーム等について検討した。
 南丹市と鞄本総合研究所がまとめた調査報告書によると、事業概要としては、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「美山かやぶきの里」を有する南丹市美山町において、市が所有する観光施設である美山町自然文化村(宿泊・飲食施設)と、市内に点在する古民家(個人所有)を市が借り受け、条例施設(公の施設に位置付け)とし、所有者の同意のもと観光施設としてリノベーションし、さらにこれらを官民連携による一体的な事業として管理運営することにより、美山町全域に分散型・体験型観光施設(宿泊・飲食機能)を配置させ、地域全体で宿泊・飲食機能の受け皿を担い、高付加価値な観光サービスの展開を目指すもの。
 上記の観光施設の他に、美山町内に点在する公共施設についても、可能な限り上記の観光施設管理運営事業との一体的な管理運営を目指す。

定期的な施設修繕等の投資
民間の納付金等を元に市が基金

 また観光施設においては、恒常的に利用者を惹き付けるために定期的な施設修繕や機能向上などの施設・設備投資が必要であり、そのため、この費用を事業を実施する民間事業者(SPC)からの納付金等を市が基金として積み立て、必要に応じて流動的に活用できる仕組みを構築する。
 調査結果では「空き家の公共施設化」について、総務省等の資料等から、地方自治法の解釈として以下の点で個人所有の空き家を公共施設と位置付けることが可能であることが明らかとなった(▽公の施設は必ずしも設置者(地方公共団体)の所有になければならないということはない▽私的所有にかかる財産であっても当該公の施設に対して地方公共団体が何らかの権原(賃借権、使用貸借権等)を有していれば良いと解釈される▽指定管理者制度においては、必ずしも所有権を有することは必要でない)。
 「基金の設置」について、官民連携事業において、民間事業者から行政への納付金を基金として行政が積み立て、これを施設の修繕費等の当該事業費に充当することについては、特に法制度上の制約が無いことが明らかとなった。
 また基金設置に際しては、基金条例を制定し、基金設置の目的、積立額、管理、運用等について定め、適切に運用する仕組みが必要(事例…高島市指定管理施設管理基金条例)。
 「民間事業者の発掘」について、美山町の現状や課題認識等を踏まえ、導入機能(宿泊機能、飲食・物販機能、サテライトオフィス、コワーキング・ワーケーション、地域のイベント広場)と事業スキームを想定し調査を実施。宿泊事業者(古民家系)3社、宿泊事業者(その他ホテル等)4社、公共施設運営者2社、ワーケーション等関連事業者3社に意向調査を実施した結果、いずれの事業者からも事業への関心が得られた。
 事業スキーム等については、以下の意見を得られた(▽想定しているスキームでおおよそ問題ない▽当初から全施設を活用するのではなく、段階的に対象施設を拡大すべき▽対象施設の躯体等基本性能に係るリスクについては市が負担するべき▽空き家については民間事業者が改修・活用費用を負担することは可能▽事業のマスターリースを行う中間法人を立ち上げ、当該法人から各事業者にオペレーション業務を委託するスキームでも実施可能)。
 「最適な事業条件・事業手法」については、民間事業者への意向調査等の結果から、想定した事業手法等について概ね実現可能性があることが示唆された。事業期間中に生じる経常修繕等の小・中規模の修繕費用を事業者からの納付金で市が基金として留保し、必要に応じて当該基金から費用を捻出する仕組みについて、他地域で先例があることや民間事業者から導入意向が得られたことから、基金の設立についても導入の可能性があることが示唆された。
 民間事業者への意向調査等の結果から、別表に示す条件が最適であることが明らかとなった。
 事業期間を16年(改修1年、運営15年)とした場合、想定する事業スキームを導入することで7・7%のVFMが発現することが明らかとなった。
 以上より、想定する事業スキームは実現可能性があることが示唆された。
 想定される課題について段階ごとに挙げ、@事業化に向けた調整では「対象とする空き家の発掘、対象施設の改修に係る事業者との事業条件の精査」、A事業者の公募・選定では「事業内容と総事業費、事業で発揮される効果等とのバランス等を勘案して、複数の事業者が応募できる事業条件の確保」、B供用開始以降は「事業者と地元団体との連携、事業の市内他地域への波及・展開の推進」とした。