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建設経済新聞社
2021/11/09

【京都】PFIのつつじが丘団地ほか建替事業 東レ建設グループに決まる 市営住宅整備の入札価格は35億6000万円



 福知山市は8日、BT方式のPFI手法を採用した福知山市営住宅つつじが丘団地ほか建替事業について、東レ建設グループを落札者に決定したと発表した。今後は11月中に仮契約し、12月議会に関連議案を提出する。
 同事業は、PFI法に基づき実施し、PFI事業者が自らの提案をもとに既存住棟等の解体撤去、建替住棟等の設計・建設等を行い、福知山市に所有権を移転するBT(BuildTransfer)方式により整備を行う本体事業(特定事業)と、提案に応じて余剰地活用企業が民間施設等の整備(付帯事業)を行う。
 審査は、第1次審査として入札参加資格の有無を判断する資格審査、第2次審査として提案内容を評価する提案審査の2段階で実施。提案審査は入札書に記載された金額が予定価格以下であることの確認や要求水準書に示す内容を満足しているか否かを確認する基礎審査と、入札価格や提案内容の水準を様々な視点から総合的に評価する総合評価を行った。
 6月18日までに3応募グループが参加書類を提出し、市は3応募グループが参加資格を有することを確認。その後、8月17日の入札には2応募グループ(松村組グループ、東レ建設グループ)が入札書を提出し、市は入札価格が予定価格の範囲内であることを確認し、事業提案書を受理した。
 福知山市営住宅PFI事業者選定委員会(委員長・青山公三京都府立大学名誉教授)で提案書類について事業者ヒアリングを行うなど審査した。その結果、10月13日に東レ建設グループを最優秀提案者に選定。選定委の審査結果の報告に基づき、市は10月21日に東レ建設グループを落札者に決定した。
 東レ建設グループの入札価格は、市営住宅整備に係る対価が35億6000万円(税抜)、余剰地の対価は2億7259万2000円。総合評価点は77・67。
 東レ建設グループは、代表企業が東レ建設葛梹支店、構成員は前田工業梶A潟jュージェック京都事務所、東洋コミュニティサービス梶A積水ハウス葛゚畿西支店。なお第2位の松村組グループは代表企業が鰹シ村組大阪本店、構成員が西田工業梶A全日本コンサルタント梶A京都パナホーム梶Aミサワホーム近畿梶Aセキスイハイム近畿梶A住友林業梶B
 東レ建設グループの事業提案によると、1期は敷地5768uにRC造8階建、延5093・04u(建築面積890・85u)の建替住宅を建設。戸数は87戸。2期は、敷地5743uにRC造7階建、延3953・80u(建築面積1057・44u)の建替住宅を建設。戸数は63戸で、合計延は9046・84u(合計建築面積1948・29u)で合計戸数は150戸。
 余剰土地活用は余剰地面積(開発面積)9086・4uに戸建住宅を開発(宅地面積6583・0u)。区画数は35区画で平均宅地面積は188・0u。道路面積は2230・5u、フットパス面積は264・8u、ごみ置場面積は8・1u。
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PFIつつじが丘団地建替
ZEH提案、工期短縮も

 福知山市営住宅つつじが丘団地ほか建替事業の整備対象施設は建替住宅(150戸の市営住宅)と、付帯施設等(敷地内通路、駐車場、自転車置場、集会所、プレイロット、ごみ置場、緑化、消防水利・消防活動空地、電気室・受水槽・ポンプ室等、再生可能エネルギーを利用するための設備)。解体・撤去施設は既存住棟、既存住棟付帯施設。
 事業場所は、福知山市営住宅つつじが丘団地(福知山市つつじが丘125−2ほか)及び京都府営住宅つつじが丘団地(福知山市つつじが丘514−1ほか)の約2・33f(用途地域は第1種中高層住居専用地域、第1種住居地域)と、福知山市営住宅向野団地(福知山市向野4−3ほか)の約1・65f(用途地域は第1種低層住居専用地域)。
 建替住棟等の整備、所有権移転及び引渡しが完了するまでの事業期間は概ね7年間で想定。
 審査講評によると、落札者の東レ建設グループの提案内容について「建物配置や住戸プランの工夫によるミクストコミュニティの形成、ゼロエネルギーハウス(ZEH−M(Oriented))や再生可能エネルギー活用による市の環境施策に対する貢献、地域の防災・避難拠点としての防災コミュニティづくり、工業化工法等のノウハウを活かした工期短縮など、基本コンセプトとそれを具体化する独自の考え方を示している」と評価。事業実施体制については「豊富な実績と環境配慮に強みをもつグループ組成、的確なリスク分析によるリスクの低減、防止策等が明確に示されており、特にPFI事業の実績が豊富な代表企業や構成員ごとの専門性」を評価した。
 市営住宅の整備では、団地計画のミクストコミュニティについて「敷地中央に南北に伸びるシンボルロードや、東西に伸びるオープンスペースなど、事業地が分断されず、周辺地域とつながるまちづくりを提案し、特に公園の配置、住棟配置や住戸配置により入居者同士や地域住民を見守ることができること、さらには共同菜園や共同花壇により交流の場を生み出す場の提案」を評価。再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進について「市内企業を介した売電や自己託送制度等による再生可能エネルギーの地産地消推進に関する具体的な提案がされ、特に公営住宅PFIにおいて国内初のZEH−M(Oriented)を実現する提案」を評価。周辺環境への配慮及び意匠・景観について「敷地北側及び東側の既存擁壁を高さ2m程度の新設擁壁となだらかな自然法面に代えることにより、道路と敷地とのレベル差を段階的に解消し、北側の既存戸建住宅地へ配慮した提案」を評価。安全・防犯及びユニバーサルデザインについて「敷地内通路の段差を緩やかなスロープとし、手すりも併設して車いすやベビーカーがスムーズに移動できるように配慮し、また、駐車場や通路等の付帯施設の要所に常夜灯や防犯灯を配置しつつ、死角を作らないように目線を隠すような場所での植栽を低木とすることによる見通しを良いまちなみの提案」を評価した。
 住棟・住戸計画の配置計画等について「車道と歩行者通路の徹底した分離、エントランス付近の屋根付きの車寄せや細部にわたるバリアフリーを徹底し、高齢者や障がい者の負担を減らす工夫」を評価。住戸内計画について「住戸内においてZEH−M(Oriented)を実現する断熱性能を確保し、住戸内の転倒・転落防止対策、利便性の高い室内設備の工夫など、高齢者や子どもなど様々な世代に対する細かな配慮がされており、特に、乾式壁を採用することで将来の入居者構成や需要の変化に対応できる住宅計画」を評価した。
 施工計画の施工体制について「公営住宅PFIの経験者など経験豊富な技術者を配した施工体制、特に既存のつつじが丘団地の入居者とほぼ同等の戸数を1期工事において建設することで、要求水準から約16ヵ月もの事業期間を短縮する提案」を評価。周辺への配慮及び安全管理について「工業化工法を採用し、生コン車の搬出入台数を大幅に削減、及び、打設時間の削減による近隣への生活環境に及ぼす影響に配慮した施工」を評価。
 入居者移転支援の事業実施体制、事業実施計画について「公営住宅PFIにおける入居者移転支援業務の実績が豊富な事業者であり、認知症介助士、保育士を有し、高齢者等へ配慮した人員を配置した移転支援体制を評価。さらに、入居者情報を作成することによる正確な情報把握と市への正確な報告に関する提案」を評価した。
 維持管理のライフサイクルコスト計画について「PSの配置方法や共用竪管を集約してメンテナンスや更新が必要な部材を削減するなど、保守点検、維持管理、修繕・改修等のしやすさへの配慮」を評価。管理・更新の容易性について「将来の更新を想定し、PS内に予備配管スペースを設けるなど保守点検・維持管理、修繕、改修等のしやすさ、さらには、可変性の高い戸境壁を随所に計画することによる将来の空き家対策を見据えた計画」を評価した。
 余剰地活用計画の活用の方針について「高断熱構造や省エネ設備機器による省エネ、太陽光発電と燃料電池による創エネにより全住戸をZEHとする提案」を評価。活用計画について「市内で販売実績の豊富な事業者による事業遂行計画、団地内のにぎわいを醸成する道路・フットパス・通路の整備、歩行者の安全を確保する車の動線計画など」を評価した。
 地域経済への貢献の地元企業活用について「下請け企業も含めた市内企業への発注額だけでなく、事業実施における人材育成機会の提供、地域の子どもたちへの教育の場の提供、事業期間にわたる地域の防災への貢献など」を評価した。
 総評として、選定委において「最優秀提案者による提案は、事業目的及び事業内容を十分に把握し、要求水準を十分に満足しているほか、堅実な事業運営が期待できる内容」とし、「今後、最優秀提案者に選定された東レ建設葛梹支店を代表企業とする東レ建設グループが市と事業契約を締結し、事業着手することになるが、委員会から評価された提案内容を確実に遂行するのみならず、市との密接なパートナーシップのもとで事業に臨んでいただくよう要望する」とした。