トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建通新聞社(中部)
2022/03/23

【愛知】名古屋市の商業地地価 一転し全区上昇

名古屋市の商業地の地価は、全16区で変動率がマイナスとなった2021年調査から一転し、全てで上昇した。市内全域の平均上昇率は3・2%。新型コロナウイルスの影響で店舗やホテルの需要が激減した昨年と比較して、一時的に感染拡大が落ち着いたことや、コロナ禍の環境に人々が慣れたことが、回復につながったとみられる。
 市内の上昇率の上位を見ると、1位が東区の4・8%(前回5位)、2位が中区の4・4%(前回15位)、3位が西区の3・9%(前回10位)。4位は中村区と千種区で、ともに3・6%の上昇となっている。新型コロナが社会的に問題となった2020年度の調査以前と比べて、上位に入った区は大きく変わらないものの、中区や中村区など商業施設への期待度が高い地域は、昨年調査で大きく下落していた。一方で、東区は3年前の調査から振り返っても上昇率5位以内に入り続けている。インバウンドや国内観光に依存しない、土地そのもののポテンシャルが高いと評価されているのかもしれない。
 商業地の標準地ごとの価格を見ると、最も高かったのは「名駅4ノ7ノ1」(ミッドランドスクエア)の1平方b当たり1850万円(1・6%上昇)で、「名駅4ノ6ノ23」(第三堀内ビル)の同1140万円(2・7%上昇)と「栄3ノ5ノ1」(名古屋三越)の同1100万円(1・9%上昇)がこれに続く。一昨年から調査地点となったミッドランドスクエアを除くと、第三堀内ビル、名古屋三越は依然として上位に入っているものの、2桁の上昇に近かったコロナ前と比べて、価格の伸び率が減少した。
 各区の商業地の平均価格についても同様の結果が出ている。特徴的なのは、中村区と中区の価格の推移。本年の調査で、中村区は1平方b当たり270万9400円(昨年は262万5900円)、中区は180万3100円(昨年は172万7200円)となった。昨年調査では中村区・中区ともに約7万円の減少で、本年はそれを少し上回る形で増加した。ただし、新型コロナが流行する前は、21年の調査で中村区が約43万円、中区が約21万円の増加。19年の調査では中村区が約29万円、中区が27万円の増加となっていた。平均価格が増加に転じてはいるものの、いまだ様子見の状況といえそうだ。
 今回の調査結果について、不動産鑑定士の小森洋志氏は「新型コロナへの慣れで、通常の不動産売買が戻ってきた」とした上で、名古屋圏の現状を「中心部のマンション価格が高騰している。投資目的の需要があると同時に、高齢者層が利便性の高い都心に回帰している」と分析した。また「栄周辺の再開発の活発化によって同地域の取り引きが増えている」「名駅近くの牛島など、価格の安かった地域で価格が上昇している」とした。
 今回の調査では、不動産への投資がストップした昨年から、再び上昇する方向へ転じた。しかし、これまでの勢いに戻ったわけではなく、いまだ踊り場の状況といえる。ウクライナ情勢の緊迫化による資材費の高騰や、インバウンドの行く末など見通せない部分が多い。昨年から引き続き、需要者の細かな動向を押さえた動きが求められることとなりそうだ。


提供:建通新聞社