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北陸工業新聞社
2022/05/18

【石川】interview2022/建設業界の2024年問題/「協力業者含め喫緊の課題」/清水建設北陸支店長中原俊之氏/ワンプレートプロジェクト「分け隔てなく、意思疎通」/初赴任の北陸「歴史と文化、伝統感じる」

 「『近き者説(よろこ)び、遠き者来る』という言葉を念頭に、まずは北陸支店のスタッフ、協力業者が元気で活き活きと働ける環境を整備するところから始めていきたい。幸い、北陸支店には新しい社屋があり、これを最大限活用し、みんなを元気にしたい」―。4月1日付で就任した清水建設北陸支店の中原俊之執行役員支店長は、初赴任となった北陸の地で新たな建設業のあり方を精力的に構築していく考えだ。
 赴任して約1カ月余り。北陸という土地柄は初めてだが、「非常に長い歴史、文化、伝統を育んできた地域で弊社創業者の清水喜助は、富山が生誕の地。頭と体で地域に根ざす伝統を理解しながら励んでいきたい。これまでの施工実績の信頼性からかも知れないが、訪問先で玄関の外まで見送ってくれることが多い。建物もとても大切に使ってもらい驚いている」との印象を抱く。
 働き方改革関連法で5年間の猶予を与えられた建設業界は、2024年問題が迫る。「元請けだけでなく、協力業者を含めて喫緊の課題。工事現場はもちろん、すべての部署で効率化、生産性向上を図りたい。国交省、日建連の方針に基づき、しっかりと取り組んでいきたい」と強調する。
 支店の管轄エリアである北陸3県と新潟のマーケット、ポテンシャルをどう捉えるのか。「機械、化学、金属、医薬品など設備投資の意欲は高い。特に海外向けに仕事をしている企業は、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルを重視している」とし、北陸支店の社屋はゼロ・エネルギーを目指したモデルルーム的な役割を果たし、見学者が多い。「弊社が導入したハイドロキュービックという水素を貯めて必要な時にエネルギーに変える設備を導入したいという顧客が増えている」と手応えを感じ取る。
 最近の資材高騰では、鉄骨に加え、アルミも上昇している。「すでに受注している案件に関しては、理解を求めていくしかない。今後の受注には、契約約款でスライド条項、工期に関しても協議できるよう条項に盛り込んでもらえるようにしたい。いつまでこの状態が続くのかが心配」との認識を示す。
 これまで主に土木畑を歩み、関西出身ということで阪神淡路大震災を契機にJRの復旧工事に携わった。「震災で東海道本線が壊滅的な被害を受けたが、JRの一刻も早く復旧させたいとの強い思いに心が動かされた。余震も続く中、その使命感は凄まじいものがあった」と振り返る。
 コロナ禍で働き方はどう変わったのか。「フリーアドレス、在宅勤務などを交え、今まで通り、現場もほぼ止めることなく対応できている。新社屋竣工時から始まった『北陸ワンプレートプロジェクト』は、一つのフロアで分け隔てなく、いろんな部署が行き交う。フロアに壁がないというのは、こうも違うのかと痛感している。新潟営業所は距離的に離れているが、大画面越しで会話ができ、現場の状況もすべて映し出せる。こうしたシステムで誰一人取り残すことのない環境づくりを目指している」という。
 鹿島、竹中工務店とロボット施工・IoT(モノのインターネット)分野の技術連携に関する基本合意書を結んでいる。「協業できる部分はお互いが競争するのではなく、建設業全体としていいものを実現すべき」とのスタンスで、北陸で唯一、金沢に支店を置いているスーパーゼネコンとして「母体がこちらにある強みを生かし、地域との関係性を深めていきたい」との意気込みをみせる。
 国交省が推進する建設キャリアアップシステム(CCUS)には、「北陸支店での登録達成率は6割ぐらいだが、もう一歩、踏み込んだ別の動きが必要なのかも知れない。メリットを協力業者に理解してもらうとともに4、5次といった重層下請けを減らすべき。すべてをチャンスと捉え、最良の方向に持っていかなければならない」との覚悟だ。

 なかはら・としゆき 1965年生まれ、兵庫県出身。京大大学院工学研究科交通土木工学専攻修了。91年、清水建設入社。営業総本部土木営業本部営業部長、同営業部長兼夢洲プロジェクト室主査、土木総本部土木企画室長など歴任。趣味はゴルフ。今後、北陸各地の温泉巡りをしたいという。

hokuriku