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建設経済新聞社
2022/07/12

【京都/滋賀】渡辺学近畿地方整備局長が就任会見 事前防災で被害を最小限に しっかりインフラ整備進める

 近畿地方整備局の渡辺学局長は8日、大阪市中央区の大阪合同庁舎で就任会見を開いた。
 渡辺局長は「一番重要と考えているのは、生命と財産を守ること、防災・減災、国土強靭化の観点。毎年のように大きな災害が起こっているが、日本の気象や地形などを考えると、大雨や地震が多く、自然災害に見舞われることは避けられない。事前防災をしっかり行いたい。それにより、被害を最小限に抑える。そのために具体的には治水、砂防、道路ネットワークなどインフラ整備をしっかり進めたい。それでも災害が発生すると被害が起きてしまう。被害に対しては、人命救助、道路啓開、応急復旧など、初動からのそれぞれの局面に応じた災害対応を、近畿地方整備局が持っている機動力、現場力をフルに総動員して総力戦で迅速に災害対応を行っていきたい」「住民にしっかりと命を守る行動を取ってもらうために環境整備が重要。自助・共助・公助の体制を普段から地域で作っていただき、地域の防災力を高めていくことが大事。防災力を高めていく上でも近畿地方整備力もしっかりと協力していきたい」
 「地域の経済、社会の活力、生活の豊かさの向上といった観点で、管内のインフラ整備、管理をしっかりとやっていく。バブル崩壊後、経済が伸び悩んでいる。近畿圏内は地域総生産力が約90兆円台あり、日本第二の経済圏。近畿の強みがある。例えばバイオライフサイエンス産業やロボット産業、医療品など、非常にポテンシャルの高い地域。日本経済、近畿経済をこれから発展させていかなければならない。その上で道路、港湾、空港などは経済発展を支える重要なインフラであり、近畿圏ではまだ整備が足りないと感じている。日本全体としてみてもインフラ整備は世界に比べ貧弱で、近畿も関東などに比べ足りていない。コロナでサプライチェーン(物流網)の問題も浮上しており、半導体などを日本で製造していく上で、地域の強みを生かす上でもインフラ整備が大事。防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策も含めて、しっかり予算をつけてやっていきたい。それが近畿圏の経済と発展基盤を支え、この地域に暮らす方々の暮らしを安全・安心、豊かな生活を実現することになる。それが地方整備局の使命だと考えており、頑張っていきたい」
 「河川関係は、気候変動による水害リスクの増大があり、これに備えるために5か年加速化対策を使うことで河川整備を一層加速し、流域のあらゆる関係者と共同して流域治水を強力に進めたい。道路関係は、高規格道路のミッシングリンクの解消や高速道路のダブルネットワークによる道路ネットワークの強化の対策として、必要な予算をしっかり確保する。強力に推進していきたい。ネットワークでは5か年加速化対策の予算がついたこともあり、整備の見通しが立った19事業について開通見通しができた。非常に加速しているので、この加速が減速しないようにしていきたい。港湾関係は、引き続き港湾整備を進めることが大事。更に2050年(令和32年)のカーボンニュートラルの実現に向け、昨年12月に国交省の港湾局でCNP形成計画策定マニュアルが策定されたところであり、これに基づいて近畿管内においても5つの港湾で検討されており、それをしっかりと進めていきたい。特に神戸港において、水素等の次世代エネルギーの利活用、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル・ポートの形成に向けた取り組みを進めており、引き続き国、神戸市と連携して取り組んでいきたい」
 「魅力ある建設業に向けた取り組みとして、頻発する自然災害からの復旧や、地域の守り手としてもなくてはならない存在と考えている。担い手の確保や処遇の問題があり、処遇と生産性向上についてしっかりやっていきたい。処遇についいては給与と休暇だと考えている。給与に関しては、労務単価が10年連続で引き上げられており、それをしっかり賃金に結びつけることが大事。その一環として、企業に対して、総合評価落札方式における加点措置なども取り組んでいる。休暇については週休2日を踏まえた適切な工期設定を行うという基本原則のなかで、週休2日制を標準化する取り組みや施工時期の平準化にも取り組んでいる。引き続き、適正な価格、工期での契約、適切な設計変更にしっかり取り組んでいきたい。そのためには受発注者間のコミュニケーションが重要と考えている。国の施策について、民間や自治体についても普及について指導していきたい。生産性向上については、BIM/CIM、遠隔臨場、ICTなどインフラDXの取り組みにより、一層推進したい。近畿インフラDX推進センターなどを活用した人材育成にも取り組んでいきたい。例えばICTを活用した施工では、紀伊半島大水害の復旧工事において、災害復旧現場及び砂防事業としては全国初の取り組みになるが、自動化施工を実施している。施工地の二次災害に対する安全確保に加えて、省力化、工期短縮など更なる生産性向上を図っていきたい」
 「大阪・関西万博を契機とした関西の社会資本整備について、2025年(令和7年)に開催される万博に向けて、関連整備計画が内閣により決定されており、国交省としても万博関連事業の整備を推進するとともに、万博会場への来場者の円滑な輸送や交通円滑化に向けた取り組みを関係機関と連携して進めている。大阪市と阪神高速が整備を進めている淀川左岸線(2期)においては、万博会場となる夢洲までのシャトルバス専用アクセスルートとして暫定的に利用できるよう整備を進められており、近畿地方整備局としてもしっかりと支援していく。万博会場に隣接する夢洲コンテナターミナルでは、待機するコンテナ車両の路上滞留による渋滞が課題となっており、その防止対策として荷さばき地の拡張及びゲート増設を推進するとともに、情報通信技術を活用したCONPASの導入を推進し、物流交通対策を進めていきたい」「淀川では、淀川を利用して京都方面から淀川河口まで一気通貫で船が航行できるよう、淀川大堰に新たな閘門の整備を進めている。沿川自治体や民間事業者とも連携して、舟運を核とした賑わいや観光コンテンツの充実に努めたい」「万博のホスト国が出展するパビリオンの日本館については、建設を経済産業省より依頼を受け、令和3年から設計を行っており、これも進めていきたい」「万博が一過性のイベントとならないよう、万博を契機に関西の新たなまちづくりの長期的な計画の一歩にできないかと考えている。関西を将来どう発展させていくか、そのためにインフラ整備がどうあるべきかを考えていくことが重要であり、地方整備局の役割も大きいと考えている。しっかりと近畿の発展のために頑張っていきたい」と決意を述べた。
     ◇     
 渡辺学(わたなべ・まなぶ)氏は、昭和39年5月生まれの58歳。北海道出身。
 平成2年に建設省(当時)に採用。入省33年目。
 地方整備局は、関東、北陸、中国、九州で、近畿は今回が初めて。7月1日の異動で近畿地方整備局長に就任した。