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建設経済新聞社
2022/07/15

【京都】府営水道ビジョン(第2次)素案 単線ラインの給水区域カバー 緊急連絡管接続など検討盛る

 京都府は14日、令和5年度から14年度までの10年間を計画期間とする府営水道ビジョン(第2次)の素案をまとめ明らかにした。
 素案によると、長期目標として「災害等リスクに対応する施設強靭化」「安心・安全のための水道システムの充実」「危機管理対策の推進強化」「ICT/IoT技術の活用」「地球温暖化対策への貢献」「持続可能な事業運営体制の構築」「将来の水需要を見据えた広域化・広域連携の推進」の7つを掲げ、それぞれ浄水施設の老朽化対策の推進・耐震化率の向上、管路施設の老朽化対策の推進・耐震化率の向上、水質リスクへの対応強化、リスク対策の促進等、ICT/IoT技術の活用による業務の効率化・省力化、環境に配慮した取組の推進、事業運営に必要な人員の確保、府営水道の給水エリア全体での施設整備方針の合意と経営形態等のあり方検討といった計画期間目標を設定。計画期間目標を実現するため、府営水道の取組方策と取組を示した。
 府営水道の取組方策と取組について、主なものをみると、浄水施設の老朽化対策の推進・耐震化率の向上では、▽水需要の減少に対応した統廃合(ダウンサイジング等)又は施設更新・耐震化を適切に計画するという形でのアセットマネジメントによる長期的なアプローチで、市町のまちづくりの方向性と連動し、コストとリスクマネジメントのバランスが取れた府営水道エリア全体での施設整備方針について受水市町と連携して検討▽府営水道エリアでは施設整備方針に基づき施設整備を進め、水需要の減少に応じて数十年かけて計画的にダウンサイジングに取り組み、併せて自然災害等による被害を最小限にとどめる施設の耐震化などの施設水準の向上(強靭化)を推進、○更新基準年数を設定し、将来の更新需要(必要投資額)を基に、それに応じた収支見通しを立て計画的に更新を実施[更新基準年数は、施設の健全性を保持したまま長寿命化・延命化を図りながら、更新需要を抑制するという考えから、法定耐用年数の1・3倍から2倍程度と設定]○実際の更新に当たっては、維持管理で蓄積したデータや機能診断結果により、個別に更新要否を判断するとともに、効果的に更新が図られるよう、新技術の導入や官民連携手法(DB、DBM等)の可能性を積極的に検討○設備更新等に伴う系列単位での施設停止においても、3浄水場間での広域水運用を活用し、受水市町への供給に支障を及ぼさないよう進める。
 管路施設の老朽化対策の推進・耐震化率の向上では、▽受水市町それぞれの状況に応じ基幹管路や災害時に重要な給水拠点(病院、避難所等)への供給ラインなどを対象に、段階的・計画的に進めるとともに、水道管路の上流に位置し、管路システムの根幹をなす府営水道送水管路を先行して実施するなど重要性に応じた適切な取組を推進▽中長期的視点に立ち、受水市町と連携しながら、府営水道エリア全体での施設整備方針の方向性を踏まえ、事業者間運用など既存の枠にとらわれない広域での効率的な管路システムの構築を目指す▽配水系統のループ化、緊急連絡管の接続等によるバックアップ機能の構築を目指す、○送水管路の耐震化は老朽化更新とも整合を図りながら効率的・計画的に進めており、宇治管路は宇治浄水場から久御山広域ポンプ場までの幹線の更新を完了し令和5年度の供用開始を目指す○宇治系管路の更新に引き続き、液状化の可能性が高い上、耐震性が比較的低く経年管となっている木津系管路(木津浄水場から京田辺第1分水までの幹線)に着手する。
 水質リスクへの対応強化では、▽府営水道(用水供給)と受水市町(末端給水)の水安全計画との整合が図られ一貫性のある計画となるよう、受水市町と連携しながら策定・見直し検討を行うとともに、受水市町と連携したきめ細かな水質モニタリング体制の検討など水源から給水栓に至る一体的な水道水の品質管理に取り組むことで、常に信頼性の高い水道水の供給を目指す、○特に異臭味リスク等が高まっている木津浄水場では高度浄水処理導入に向けた取組を進める。
 リスク対策の促進等では、▽受水市町と連携・共同した危機管理に関する取組を充実・強化。具体的には単線ラインの給水区域をカバーできるようにするため、バックアップ機能(緊急連絡管接続等)の検討を行う等、○送水管路の耐震化を計画的に進めるとともに、非常時水運用にスムーズに移行できるよう通常時から定期的に各方面への水運用を実施するなど広域水運用システムが持つ威力を最大限発揮させる取組を推進。
 ICT/IoT技術の活用による業務の効率化・省力化では、▽水道事業運営に関する各種業務(経営計画、総務経理、施設整備、維持管理、運転管理、水質管理、危機管理など)に対して、CPS/IoTによる先端技術を活用し、水道情報(データ)を横断的かつ柔軟に利活用できる仕組みについて、受水市町と連携して調査・研究等を行う場「プラットフォーム」を設置し議論を進め、運営基盤の強化や業務の効率化を目指す、○浄水場等の運転監視システムや事務系システム等の更新に向けて、府営水道エリアでの広域連携などを見据え、プラットフォームでの活動状況を反映したシステムを検討。
 環境に配慮した取組の推進では、▽府営水道エリア全体での施設整備方針を検討する中で、安心・安全な水を安定的に供給することを最優先にした上で、ダウンサイジングによる使用電力の削減など、環境負荷に軽減にも配慮したエネルギー効率が高い水道システムを目指す、○3浄水場接続による広域水運用を活用し、夏季等の電力需要逼迫時には、ピークシフト等の節電対策を実施○積極的に省エネルギー設備(高効率機器・ポンプのインバータ制御等)の導入を図る。
 府営水道の給水エリア全体での施設整備方針の合意と経営形態等のあり方検討では、▽府営水道エリアの施設整備の方向性について議論し、適切な規模の施設配置について合意のもと、施設整備方針を策定し施設整備を進める▽全体最適を目指した合理的な経営判断が可能となり高い効果が見込める経営の一体化を含めた経営形態のあり方等について検討を進める、○施設整備方針の合意や経営形態のあり方、建設負担水量の調整についての検討が進むようリーダーシップを発揮するとともに、合意された施設整備方針に従い、計画的に施設整備を行う。
 また素案では、中長期的な更新需要の見通しの試算を示した。令和5年(2023年)から令和39年(2057年)までの35年間で727億円を見込む(構造物・設備603億円、管路124億円の合計。管路の更新は長期の事業期間が必要なため総事業費を平準化して計上)。
 令和4年(2022年)から14年(2032年)までの10年間の資本的収支の見通しについて、建設改良費は令和4年度が23億5600万円、5年度が37億9600万円、6年度が32億2800万円、7年度が18億0300万円、8年度が18億3300万円、9年度が26億5700万円、10年度が23億9800万円、11年度が28億3100万円、12年度が24億5000万円、13年度が16億5000万円、14年度が23億8600万円。
 府営水道と受水市町全体での適正な施設規模について、市町と検討するための施設統廃合案を2案作成。大規模集約を念頭に府営水道の施設を維持し、市町の施設を削減する統合ケースは浄水場を21ヵ所から9ヵ所に集約する案。小規模分散を念頭に府営水道の施設を削減し、市町の施設を維持する統合ケースは浄水場を21ヵ所から13ヵ所に集約する案。
 広域化・広域連携の推進と経営形態のあり方については「管理の一体化や施設の共同化など、実現可能な取組から広域化・広域連携を推進するととともに、並行して、例えば企業団化など経営の一体化も含めた経営形態のあり方について検討を進める」「受水市町の参画については、管理の一体化や施設の共同化から経営の一体化まで様々な方法があると考えており、地域の実情に応じた最適な参画方法を選択できるよう、複数の選択肢を示しながら検討を進める」とした。
 企業団化の例として、例1「経営の一体化」(配水まで統合…資産の保有と管理は全て企業団)、例2「施設の共同化」(浄水のみ統合…浄水場のみ企業団が保有管理)、例3「管理の一体化」(浄水管理を一体化…保有は市町、浄水場の管理は企業団)を示した。
 今後は、9月頃にビジョン中間案をまとめ、12月頃〜令和5年1月頃にパブリックコメントを実施した上で最終案を固め、令和5年3月頃までに新ビジョンとして公表する予定。