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建通新聞社(静岡)
2022/08/05

【静岡】ふじさん工業用水道 官民連携手法導入

 静岡県は、今年3月に富士川工業用水道と東駿河湾工業用水道を統合した「ふじさん工業用水道」について、事業統合に伴う施設整備への官民連携手法の導入を検討している。新設するポンプ場の設計・施工にデザインビルド(DB)を採用する他、ポンプ場や既存施設の維持管理なども民間企業に包括委託し、官民が連携して工業用水道を運用できるようにする。官民連携の事業範囲・期間・スキームを固め、年内に導入方針を決定する。
 大規模工場の縮小や撤退によって、工業用水の需要は全国でも減少傾向にある。工場との契約率が低下する中、工業用水道は、更新投資の増加、維持コストの高止まり、浄水場などを運用する技術職員の高齢化といった課題を抱えている。
 こうした厳しい経営環境を民間の力を借りて改善しようと、工業用水道に官民連携手法を導入する地方自治体が増えている。昨年4月には、熊本県が運営する有明・八代工業用水道に工業用水道として国内初のコンセッション方式を導入した。
 ふじさん工業用水道は、富士川工業用水道を利用していた製紙工場の利用廃止を受け、今年3月に東駿河湾工業用水道との事業統合によって発足。ふじさん工業用水道も、全国の工業用水道と同様の課題を抱えており、県は官民連携手法を導入して経営改善を図る考え。
 現在、ふじさん工業用水道は、富士川と芝川を水源としているが、より濁質の少ない芝川の水量を増やすため、滝戸分水場付近にポンプ場を新設。厚原浄水場を通じて給水区域に工業用水を供給できるようにする。芝川水源を最大限に活用することで、富士川水源からの取水コストと送水コストを、厚原浄水場の浄水コストの削減につながる。
 ポンプ場の新設には、「DB+包括委託」を採用する見通し。20年度に行った調査では、この方式の採用で建設・維持管理コストは20年間で58億8800万円削減できるという。削減額の見込みが28億5000万円だったコンセッション方式と比べ、高いコスト削減効果が得られる。
 現在、県は、事業に参画が見込まれる企業の意向調査などに加え、ポンプ場の関連施設の整備や既存の浄水場の管理など、官民連携事業の対象範囲などを検討している。有識者らでつくる経営評価委員会の意見も踏まえ、年内に導入方針を決める。23年度に事業者選定と基本契約、24年度の設計着手、29年度の新ポンプ場稼働を見込んでいる。