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北海道建設新聞社
2022/11/02

【北海道】道内5区域で洋上風力の系統確保スキーム適用検討


 経済産業省は、石狩市沖など道内5区域で、洋上風力発電に応じて適切な電力の出力規模を定め、必要な系統容量をあらかじめ確保する「系統確保スキーム」の適用を検討する。まずは2022年度に、5区域の適切な洋上風力発電出力規模などの調査に取り組む。結果を基にスキーム適応が決まれば、開発事業者側のリスクやコスト低減にもつながり、道内での洋上風力発電実現に向けて弾みがつきそうだ。(経済産業部・宮崎嵩大記者)

 道内の5区域は石狩市沖をはじめ、岩宇・南後志地区沖、島牧沖、檜山沖、松前沖。経産省はこれらを「系統暫定確保に係る事前調査の対象区域」に選び、系統確保スキームの適用を検討することとなった。国が本道を再生可能エネルギーの重要拠点と位置付ける一方、系統容量不足が大きな課題であることが選定理由とみられる。

 洋上風力発電開発事業者は、地域の一般送配電事業者を通して系統容量を個別に確保しなければならないが、実際に各区域で洋上風力発電を手掛ける事業者は限られる。特定の事業者が確保した系統容量に基づく発電所の開発しかできず、区域のポテンシャルを最大限発揮できなかったり、複数の開発事業者によって必要以上の系統容量が押さえられることで、他の再エネ普及を阻害する恐れもある。

 この懸念を解消する系統確保スキームは、洋上風力発電実現のための地域系統の交通整理≠ニ言える。国が各区域の洋上風力発電に必要な出力規模を示し、電力広域的運営推進機関への要請を通じて、一般送配電事業者が必要な系統容量を確保する。

 同一区域での重複した調査を回避でき、開発事業者側の投資リスクやコスト低減にもつながる。あらかじめ洋上風力発電に必要な系統容量が明確になるため、対象区域で系統増強が必要な場合、洋上風力以外の電源も募集して各社で系統増強工事費の負担する一括検討プロセスの活用も可能。同スキームによる一体的な再エネ推進も期待できる。

 近く、本格的な事前調査が始まる。一般財団法人日本気象協会に委託していて、それぞれの区域に設置する、適切な風力発電機の規模とともに、具体的な系統接続方法など技術面も含めて調査する。国は調査結果を踏まえて、スキーム適用の可否や適用内容を判断する方針だ。

 一般海域での洋上風力発電所開発は、国が新設可能と認める「促進区域」指定と、指定後の事業者公募を経て可能となる。9月30日には新たな区域整理が公表され、長崎県西海市江島沖、新潟県村上市及び胎内市沖、秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖の3カ所が促進区域に選定された。千葉県九十九里沖が促進区域の前段階となる「有望な区域」に選ばれている。

 道内の5区域は、促進区域の前々段階となる「一定の準備段階に進んでいる区域」に整理されているが、今回の発表で進展はなかった。

 22年1月に経産省資源エネルギー庁がまとめた資料では、一定の準備段階に進んでいる区域を対象とした調査開始から2年後の促進区域指定と、3年後の事業者公募開始のシナリオが描かれている。系統のほか利害関係者との調整も必要だが、道内5区域で、このシナリオを歩む可能性がある。

 北海道電力ネットワークの担当者はスキーム導入に向けて「必要に応じて協力・検討していきたい」と前向きだ。道内での洋上風力発電を計画する事業者の担当者からは「系統確保が進めば、促進区域指定後の事業実現性が高まる」と期待の声が上がっている。