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北海道建設新聞社
2022/11/07

【北海道】東急不動産取締役常務 田中辰明氏に聞く



 ニセコの開発がコロナ禍でも勢いづいている。中核を成す倶知安町ひらふ地区では、東急不動産(本社・東京)が来春から宿泊施設やスキー場のリニューアルといった大規模な設備投資に乗り出す。外国人の入国規制緩和でインバウンド回復に期待がかかる中、リゾート形成をけん引してきた同社は、ニセコの将来図をどう描くのか。ウェルネス事業で指揮を執る田中辰明取締役常務執行役員に聞いた。

 「ニセコは全国のリゾートでも最重点エリア。成長性を含め価値を向上させたい」。老朽化が進む施設の刷新で新たな需要の獲得に力を入れる。

 1986年完成の客室数125室を誇る旗艦施設「ホテルニセコアルペン」は、2023年4月からリニューアルに取り掛かる。直結するスキー場のセンター施設として機能するだけでなく、倶知安町が再編予定のひらふ第1駐車場と連携して通年型リゾートの拠点とする。

 大規模改修が有力だが、「今後の検討でより適切な手法が見つかれば最適な選択肢を取る」と建て替えの可能性も示唆する。

 地域を代表するニセコ東急グランヒラフスキー場では、4人乗りリフト「エース第2センターフォー」を架け換える方針。21年11月に発表した30年までのまちづくりプロジェクトを実現する第1弾だ。

 現リフトを10人乗りゴンドラへ更新し、スキー客の輸送量を向上させるほか、マウンテンバイクを搭載可能な仕様にしてグリーンシーズンの集客も狙う。24年冬の運行開始を目指し、その後も他の関連施設や索道の更新を構想している。

通年魅力づくりや脱炭素も

 30年を見据えた取り組みには脱炭素への貢献も掲げる。「外国人をはじめ利用客の意識は想像以上に高い」とし、環境に配慮した戦略を率先して進めることがリゾート施設としての価値向上につながるとみる。

 他地域で実績のある二酸化炭素吸収源としての森林整備、生ごみや枯れ葉の堆肥化、温泉熱やバイオマス利用をニセコでも始めたい考え。「ゲストに宿泊施設を利用してもらうことで環境問題の解決に資する時代だ。ニセコならではの取り組みも検討できれば」と意気込む。

 通年型リゾートとしての魅力づくりも課題だ。マウンテンバイクや観光ゴンドラによる冬季以外のスキー場活用に加え、「宿泊してもらうためのエンターテインメントが必要」と指摘する。

 ニセコエリア全体では、商業機能や地域交通のさらなる充実が求められる。その実現には他者との連携が欠かせない。「弊社単独で商業施設を建設・営業するのではなく、いかに協力可能な事業者とタイアップしながら整備できるか」が重要と話す。30年度末の開業を目指す北海道新幹線倶知安新駅を中心に周遊する2次、3次交通も地域や行政との協力を通じて強化を図る。

 近年のニセコは、分譲型コンドミニアムや高級ホテルが目立つことから、宿泊施設の多様化がスキー場にとってプラスになると評価。需要を見極めつつも必要な場合には直接的な開発に取り組む可能性を示す。

 (小樽支社・塚本遼平、経済産業部・武山勝宣記者)