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北陸工業新聞社
2023/02/06

【石川】interview2023/「金沢城二の丸御殿は今までと違う難しさ」/石川県土木部次長熊田康也氏/阪神淡路大震災の派遣経験が大きい/オールマイティにこなせるよう

 石川県政は北陸新幹線金沢開業や東京五輪といった大きな節目に合わせて、新たな施設整備を進め、県内外の人たちをもてなしてきた。谷本県政から馳県政への移行から間もなく一年を迎えようとする中、石川県土木部次長(建築・営繕担当)金沢城二の丸御殿復元整備推進室次長の熊田康也氏に、これからの建築・営繕行政のあり方などを聞いた。

 入庁以来30年余り、建築住宅、営繕畑を幅広く担当し、多くの県有施設の整備、住宅政策などに関わってきた。

 「1998年の建築基準法改正に伴う建築確認の民間開放の際、県建築住宅総合センター(当時)に出向し、指定確認検査機関の立ち上げに関わった。2005年の耐震偽装問題への対応、構造計算厳格化による適合性判定機関の立ち上げなど、いろんなことがあった。指定確認検査機関は現在、しっかりと地域に根づき、サービス提供の仕方が役所だけのルールではなく、民間ベースの丁寧かつ迅速にという工夫で消費者ニーズを捉えている」

 1995年1月に発生した阪神淡路大震災では応急危険度判定に従事し、その直後、4月から4カ月間、兵庫県に派遣され、復興支援にあたった。

 「現地は大変な状況だった。被災した公営住宅の復旧に向けて、修繕計画の設計書を取りまとめたり、入居住民への説明の手伝いをした。2019年3月に起きた能登半島地震の際にはあの時の教訓、経験を踏まえ、心構えとして、落ち着いて仕事をすることができたと思う」

 近年竣工したクルーズターミナルや国立工芸館、県立図書館など、谷本正憲前知事は公共建築に対する関心が強く、職員に求めるレベルも高かった。

 「我々職員に対しては『つくって終わりではなく、完成後もしっかり生かされる施設にすべきで、人が集まらないと意味がない。それだけの機能で終わるのか』との考えを示すとともに、新幹線開業など節目節目で何が一番効果を発揮するかを緻密に計算し、事業のスケジュールを立てていた。時間的にかなり厳しいものもあったが、『これをやらないと県民、石川県のためにならない』との信念があったからだと思う」
 菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓から始まった金沢城公園の復元物語は、いよいよ二の丸御殿の整備に移行した。

 「これまでは櫓や門、長屋といった兵器庫、防御のための建物だったが、二の丸御殿は政務を司る場所。座敷や迎賓館的な部分だったりと180度違う。とても難しい。近年、全国で復元した御殿、例えば名古屋城は、徳川将軍が上洛する際の宿所ともなったものだが、百万石の加賀藩は、徳川御三家に匹敵した格を示す御殿であったと学識経験者からも指摘されている。まだまだ越えなければいけないハードルがある」

 中西陽一、谷本正憲、馳浩氏と3代の知事の下で奉職する格好だ。

 「中西さん時代からの県庁マンもかなり少なくなった。職員には常々、私たちは行政サービスマンであり、サービスを提供する仕事だと自分の考えを伝えている。馳知事はカーボンニュートラル(CN)やデジタル・トランス・フォーメーション(DX)の推進を掲げるなど、時代が期待するものにスピード感を持って取り組む方針であり、私たちは建築住宅と営繕の両部門をオールマイティにこなしてこその行政マン。きちんとした品質を確保し、長持ちできる施設の整備、維持管理に努めていきたい」

 くまだ・やすなり 1963年生まれ、白山市(旧美川町)出身。福井大工学部卒。88年、石川県庁に入庁。2017年、土木部建築住宅課長、18年に同部営繕課長兼危機管理監室危機対策課担当課長兼商工労働部産業立地課港湾活用推進室次長、21年4月から現職。趣味はサイクリング。

hokuriku