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北海道建設新聞社
2023/02/06

【北海道】釧路駅前に民間開発誘導 歩行者増やし中心部再生へ

 釧路市は、10―20年後の完了を見込んで計画するJR釧路駅高架化に伴いウオーカブル≠ネまちづくりを推進する。駅前にマンション、医療・介護施設、サービス付き高齢者向け住宅、スーパーなど人が定着する民間施設開発を促すほか、車線減少によるフリースペース捻出など大規模な道路再構築を進め、歩行者を増加させることで中心部の再生を図る。(経済産業部・宮崎嵩大、釧路支社・堀内翼記者、関連記事7面に)

 市が目指すウオーカブルなまちづくりとは「歩きやすい」「歩きたくなる」まちづくり。まずは、JR釧路駅の高架化で確保できる駅周辺の1・2―1・6haの敷地でマンション、商業施設、長期滞在者向けホテルなど安定した人通りを見込める民間施設の開発を促すほか、バスターミナル、交通広場整備、市民文化会館などの公共公益施設誘致を進めて駅前のにぎわい創出を狙う。

 2022年度から市内中心部のまちづくり再整備方針案策定を始めた。策定作業や民間施設誘致の一環として、道内外に拠点を置くデベロッパーを対象としたサウンディング調査にも取り組んだ。

 調査では、中心部での事業に対する関心や事業者になり得る可能性などを聞き取り、直近の進出に意欲を示す事業者はいなかったものの、マンション開発などによる活性化を期待する声が寄せられたという。市内の不動産鑑定士である湯城誠氏も「駅前はマンション整備が効果的。低層階に小売店や保育所などの機能を持たせれば、人通りや買い物需要が増し、さらなる開発を呼び込むことにつながる」とみる。

 ウオーカブルなまちづくりには、民間施設誘致と並行して道路の再構築が必須。市は駅前から延びる北大通の延長500mほどで、現状4車線の車道を2車線化する構想を描く。車線減少で捻出したスペースを活用し、ベンチを設置するなど憩いの場を提供できるフリースペースを設ける。

 参考にするのは松山市の事例だ。同市は12億5000万円を投じ、松山城など観光資源に近い中心市街地の花園町通の延長250mにわたって無電柱化、車線縮小、歩行空間の拡張などを施した。拡張した歩行空間では地元商店街主催のマルシェなどが開かれ、12時間当たりの歩行者通行量は整備前の08年と比較し、整備後の17年には約2倍(5512人)となった。同市担当者は「人流増とともに沿線不動産の動きが活発化し、老朽化ビルの改築やホテル・店舗開発が促進された」とウオーカブルなまちづくりがもたらす好影響を説明する。

 ただ、釧路市中心部の現状は厳しい。漁業をはじめとした基幹産業の成長で発展を続けてきたが、近年は市街地が郊外に拡大して消費ニーズが移動。市の調査によると、22年8月末時点で市中心部には75件の空きビルがあり、駅前であっても大型物件が活用されていない状況だ。ある不動産事業者は「道内他都市と比較して安価であるにもかかわらず、買い手が見つからないケースが多い」という。

 不動産需要の乏しさが示すように、開発を担う民間事業者の確保が構想実現の一つの壁となる。あるデベロッパーの担当者は「駅利用者や一帯の人通りが少ない印象。ある程度のにぎわいが担保されていなければ、釧路市への進出は現実的ではない」と話す。

 そんな中、市は今後、空き店舗活用への支援などに投資し、にぎわい創出を図る。23年度はデベロッパーへのヒアリングを続けるほか、民間投資促進に必要な要素を地元商店経営者らと話し合うワークショップを立ち上げ、検討を深める。まずは、地域の力でどれだけ中心部に活気を取り戻せるかが将来の分かれ道になりそうだ。