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北海道建設新聞社
2023/05/02

【北海道】目指せ、道東周遊構築 新たな名所や交通網整備推進へ


 星野リゾート(本社・長野)の進出が決まり、期待感が高まっている弟子屈町川湯温泉。環境省と町が廃ホテルの撤去を推進するといった官民が連携した取り組みは、全国的なモデルケースにもなり得る。コロナ禍で落ち込んだ消費者マインド回復の打開策として、道東地域が一体となった周遊観光を求める声も多い。車社会の道東にとって交通網の整備は不可欠。十勝川温泉などの観光スポットを結ぶネットワーク構築が重要だ。関係者への取材を通じて将来像を考察する。(帯広支社・草野健太郎、経済産業部・坂本健次郎記者)

 道東で星野リゾートの進出に期待する声が多い。釧路市の蝦名大也市長もその一人だ。釧根地域は、JR釧路駅や釧路空港、根室中標津空港が大きな役割を担い、観光バスやレンタカーを使って地域を周遊する場合が多い。

 蝦名市長は「周遊観光の促進には、新たな宿泊施設や観光スポットが不可欠」と話し、知名度と交通利便性向上の重要性を説く。北海道横断自動車道や44号尾幌糸魚沢道路の整備促進などに向けた要望活動に力を入れる考えだ。

 中標津町の西村穣町長も喜ぶ。「周遊する観光客に滞在してもらえるようにしたい」と意気込み、旬の食材活用に着目。サクラマスや牛肉料理を町内飲食店で提供してもらう事業を2023年度からスタートする。

 十勝に目を向けると、モール泉が特徴の十勝川温泉は国内外から多くの観光客が訪れる人気温泉地だが、コロナ禍で客足が激減。ここ数カ月は回復傾向が続いているが、23年3月現在でも客足はコロナ禍前の8割程度だ。

 星野リゾートの星野佳路代表は「自宅から1、2時間圏内の観光が鍵を握る」と強調。釧路市と帯広市の距離感を考えると、十分商圏になり得る。

 好調な道の駅の活用も重要だ。音更町や上士幌町、中札内村はコロナ禍でも安定して集客した実績がある。このうち、道の駅おとふけは開業1年目に来場者140万人を達成した。オカモトを代表とするグループが運営を担い、ノウハウを発揮。町の担当者は「隣接する柳月の工場とも相乗効果があった」と分析し、民間企業との連携効果を再認識した。

 釧根管内では、白糠町にあるしらぬか恋問の移転新築が進む。設計、施工、管理運営はオカモトを代表とする7社グループが受託。おとふけの事例をもとにブラッシュアップした取り組みが期待される。

 帯広市内の藤丸百貨店跡も鍵を握る。新会社は建て替えも視野に施設の在り方を模索。経済界からは「釧路まで商圏を広げるべき」との意見が一定数あり、管外に目を向ける姿勢は浸透している印象だ。一方で観光面だけに注力すれば良い問題ではなく、慎重な議論が必要になる。

 星野リゾートの進出が、川湯温泉に期待感をもたらしているのは事実だ。十勝と釧根の距離感を考えると、道の駅活用やインフラ整備次第で人流創出は夢ではない。観光業界はコロナ禍の収束と同時に、新たなフェーズへの移行が求められている。