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建設経済新聞社
2023/05/31

【京都】旧総合資料館跡地に芸術拠点 京都こども文化会館などの機能を継承 一体的に整備・運営できる手法検討

 京都府は30日、京都市左京区下鴨の旧総合資料館跡地等の活用に係る意見聴取会議(座長・椋平淳大阪工業大学教授)を開催。跡地活用について、文化芸術の振興とまちづくりの2つの視点から整備の方向性とコンセプトをまとめ報告した。
 文化芸術の振興の視点では〈老朽化の進む府立文化芸術会館と令和2年度閉館の京都こども文化会館の優れた機能を継承したプロ・アマチュアを問わない多様な人々の創造活動を支援する場〉〈子どもたちをはじめとした幅広い府民が文化芸術に触れて交流することができる場〉等、まちづくりの視点では〈北山通からエリア内に人々を誘導するエントランスとしての役割と多様な人々の交流の創出〉〈エリア内や周辺の立地施設、地域とのハード・ソフト両面での有機的な連携〉〈豊かな自然環境や住環境との調和を図り、日常から離れたやすらぎと憩いの提供〉〈子どもや高齢者、障害者、妊産婦など誰もが快適で安心して利用することができる空間づくり〉とした。
 整備の方向性として「舞台芸術・視覚芸術拠点施設と北山エリア全体の魅力向上につながる付帯施設を一体的に整備することで文化芸術とまちづくりに両輪で取り組む」を掲げ、コンセプトは「府民一人ひとりが誇りと愛着を持てる文化芸術を軸とした交流創造空間」と設定した。
 拠点施設に求められる機能と想定される主な諸室としては、劇場(ホール機能)が「舞台構造はプロセニアム形式とし、本格的な舞台芸術作品の上演に対応できる舞台設備」「大型トラックに対応した搬入口や専用エレベーターなど安全性と機能性を確保した施設」「舞台に近接して舞台備品倉庫、ピアノ庫などを設置するなど使いやすい施設」「客席は舞台までの最大視距離を極力短くすることで一体的な劇場空間を創出」「移動客席を採用するなど多様な演出に対応できる柔軟な客席構成」「車いす席や親子鑑賞室など全ての鑑賞者が快適に過ごせるよう鑑賞環境を確保」、展示(ギャラリー)機能が「展示室は、複数の展示室を備えつつ可動壁によって一体的に利用可能な柔軟な構造」「十分な天井高を確保するなど大型絵画や造形、映像作品に対応」「重量物にも対応可能なピクチャーレールや展示台などにより平面作品と立体作品の双方が使いやすい仕様」「壁面は多様な形態の展示に対応。耐水性の床や展示支持、照明などの機能を備え、大型の絵画等が展示できる耐荷重を確保」「多目的ギャラリーは、白い天井と壁に囲まれた凹凸や装飾がない汎用性の高い空間(映像作品にも対応)。美術工芸作品の展示のみならず、演劇やメディアアートなど、多目的に利用できるスペースとして活用」、創作機能が「スタジオは、用途に応じた複数の面積構成として最も大きい練習室はホールの舞台と同等程度の広さを想定。1室は和室として敷舞台を設置することにより、狂言・落語・舞踏・邦楽などの開催にも対応。美術工芸作品の創作活動や衣装製作・舞台道具工作などの利用も想定」、交流・発信機能が「エントランス・プロムナードは、北山エリアの豊かな自然を活かしたオープンスペースとして、パブリックアートの展示や植物園などエリアを訪れた人々を施設内へ誘導。劇場公演の前後における人の流れを考慮した動線づくり。文化芸術に関連する企画など、多様な人々の交流を促進する仕掛けづくり」とした。
 施設運営に関しては、経営能力を有した機動的かつ柔軟な施設運営、マーケティング能力を有した戦略的な施設運営などを挙げ、公共的機能を発揮しつつ、利用者目線で機動的・柔軟な施設運営が必要とした。
 付帯施設については、広場・飲食、産学連携・研究支援、植物園の学習機能との連携等を例として示した。
 最適な事業手法の検討については、拠点施設及び付帯施設を一つの事業主体が一体的に整備・運営できる事業手法を優先的に検討するとし、併せてエリアマネジメントの手法も検討を行うとした。
 意見聴取会議で委員からは「ワークショップなどを通じ、様々な方面から意見を聴いたと考えている。意見も多様であった。その中で出てきた枠組み、方向性は、かなり一致した所にあると感じた。公共的機能を発揮すること、利用者目線で柔軟な施設運営が必要という点」「利用者目線で考えることが重要。跡地だけでできるのか。全て実現しようとするとアイデア、尽力が必要。これを府がつくり、運営するのは難しい。事業コンペで整備・運営など事業全体を民間事業者にやってもらう形でやれば効率的になるのではないか」「柔軟に対応できる施設であってほしい」「意見を全て取り入れると相当大きなものになる。現実的な対応を」「一度整備すると変更するのが難しい。変化に対応できる可変的な部分も必要。跡地活用の視点には府立文化芸術会館、京都こども文化会館の優れた機能の継承が盛り込まれている。限られた土地で地域の思いを受け止められるよう、民間導入を見据えたステップとして、サウンディング(市場)調査をされるのがいいのでは」「北山エリアでは、植物園、共同体育館、総合資料館跡地の3つの事業があり、一元的に管理・運営する必要がある。海外であるエージェント手法の検討も考えてはどうか」「この場所で文化・環境のエリアマネジメントができればとても面白い。その仕掛けを作ってもいいのではないか。事業者が旗振り役となって地域と連携していけば、面白い地域になるのではないか」「要件定義が一番の課題」などの意見が出た。