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建通新聞社(静岡)
2023/09/05

【静岡】小中学生に「住教育」普及

 静岡県や住宅・建設分野の関連団体でつくる静岡県住宅振興協議会は、小・中学生をターゲットに「住教育普及事業」を展開する。深刻な担い手不足に陥っている住宅産業に若年層を呼び込むため、児童・生徒にも身近な住まい・まちの魅力を教育現場で伝えるのが狙いだ。県と会員団体が連携し、教材や動画を作成したり、小中学校で出前講座やワークショップを開くことを企画している。
 住教育とは、住まいやまちで安全に、安心して暮らすため、住生活や住環境について学ぶ機会を提供すること。協議会では、子どもたちが高齢化と入職者数の減少に悩む住宅・建設産業に興味を持ってくれるきっかけとするため、2023年度から住教育の普及に取り組む方針を決めている。
 協議会がモデルとしているのが、青森県の取り組みだ。青森県では、将来の住生活やまちづくりを担う次世代の住まいに関する判断能力を育てるツールとして、18年度から小学校・中学校・高校の授業に住教育を取り入れている。
 青森県内の各校では、県の住まい・住環境学習指針を踏まえ、技術・家庭科の授業にこの住教育を組み込んでいる。住宅の防災対策や断熱性能、安全な住空間などついてまとめた教材も整理し、授業で活用している。住宅・建設分野の関連団体が専門家を派遣し、出前授業も開いている。
 静岡県住宅振興協議会では、こうした青森県の取り組みも参考に、小中学校で使用する教材や動画を作成する他、出前講座や大工・設計などの職業体験ワークショップの開催などを検討。住教育に継続して取り組めるよう、まずは協議会としての実施計画をまとめる。

「建築大工 ピーク時の3分の1に」

 木造住宅の年間供給戸数のうち、年間の受注戸数が50戸未満の大工・工務店が施工する木造住宅の供給戸数は約半数を占める。一方で、建築大工の就業者数は、ピークだった1980年の93万7000人から年々減少。直近の2020年の国勢調査では、29万8000人と30万人を割り込んだ。就業者数の43%が60歳以上と高齢化も深刻だ。
 10月に始まるインボイス制度や、来年4月の時間外労働の上限規制が追い打ちを掛け、建築大工を取り巻く環境はさらに厳しさを増す。地域材の利用や伝統的な建築技術を継続するためにも、建築大工への若年層の入職は社会的課題であるとも言える。小中学生が住宅の造り手に触れる機会が増えれば、建設分野全体に関心を持つきっかけになることも期待できる。