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北海道建設新聞社
2023/09/08

【北海道】函館市の道新幹線函館駅乗り入れ調査が本格化

 函館市は、新幹線の函館駅乗り入れに関する調査委託先を千代田コンサルタント札幌営業所に決めた。乗り入れ方法などを探る作業が本格化する見通しだ。4月に初当選した大泉潤市長の肝いり政策で、実現すれば函館−札幌、函館−東京が新幹線で結ばれる。実現性や課題を取材した。
(経済産業部・織本真)
 現時点で乗り入れ実現のハードルは高いといえる。基盤となる新函館北斗−函館間(約18q)が新幹線札幌延伸に伴い、JR北海道から経営分離されるためだ。道の試算では、同区間を第三セクター方式で維持した場合、分離後30年間の累積赤字は400億円を超える。
 昨年8月、当時の工藤寿樹市長は並行在来線の在り方を協議する道と沿線自治体の会合で「インバウンドが増えれば自動的に採算性はよくなる」と維持を主張。北斗市の池田達雄市長も「新函館北斗駅の使命としても維持したい」と応じた。同区間は、新幹線へのリレー役とともに生活路線としても重要だからだ。
 しかし、輸送密度に関する道の試算を見ると、2030年度は1日当たり5569人。30年後の60年には、人口の自然減などに伴い、2963人と半減する。インバウンドが利用者や収支をかさ上げする保証はない。
 さらに、新幹線開業から約半年後の16年10月に開業対策推進機構(解散)が実施した新函館北斗駅の乗降客調査によると、新幹線降車後の移動手段は、函館ライナーが42・1%、スーパー北斗・北斗(札幌方面)が18・7%。約4割が新幹線と在来線を併用し、函館方面に向かう結果だが、札幌延伸後は不透明だ。
 ハード面はどうか。新幹線の標準軌は1435o。函館ライナーの軌間を368o上回るが、線路の外側にレールを追加し、三線軌条とする方策が有力だ。車両幅と高さも新幹線が400−500o程度在来線を上回るが、新函館北斗−函館間はトンネルが存在しないため、障害は大きくないと思われる。
 千代田コンサルタント札幌営業所による調査は24年3月まで。契約上限額は約3440万円。必要となる経費や利用客の見通し、乗り入れ開始から30年間の収支予測などを詳しく調べ、市は結果を市民らに公表する方針だ。
 新幹線の函館駅乗り入れは、鉄道の高速化による利便性向上と従来の生活路線としての役割をいかに両立させるかが大きな焦点だ。大泉市長の今後のかじ取りが注目される。