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日本工業経済新聞社(埼玉)
2023/12/18

【埼玉】土木学会全国大会第78回年次学術講演会、埼玉県職員が優秀講演者に

 9月に広島県で開催された2023年度土木学会全国大会第78回年次学術講演会において、県河川環境課の昔農卓磨(せきのう・たくま)さんが優秀講演者の栄誉に輝いた。「河川空間でのオーバーツーリズム対策における有料化実証実験について」をテーマに発表。優秀講演者は、学生や民間企業の社員が受賞するケースが多く、公務員が受賞するケースは少ない。埼玉県職員が受賞したのは今回が初めてとみられる。
 今回の快挙に昔農さんは「うれしいし、驚いている。講演は専門的な分野や用語も多く、縁もないと思っていた。分かりやすい説明を心掛け、それが評価されたのだと思うと、この機会に取り組んでよかった」と話す。
 表彰制度は、将来の土木界を担っていく若手の研究者、技術者の論文内容や講演技術が向上し、全国大会が活性化することを目的に定めたもの。 昔農さんは飯能市役所からの出向で、飯能市職員のころから入間川河川敷の「飯能河原」の利活用に携わってきた。近年はコロナ禍もあってアウトドアブームが一気に広がった。一方で、近隣には民家も多いことから急速な需要増加に困惑している住民も少なくなかった。特に21年春の大型連休には、110番通報が相次いだこともあるなど「目に余る状態」で、許容範囲を超えた利用に悩まされていた。そのため、一時的に飯能河原を閉鎖する事態にまで発展。
 一方で、河川管理者の県としては「有効的に利活用したい」との意向があり、飯能市としても「観光資源を有効活用したい」との思惑もあった。そこで、課題解決に向け関係者が一致団結して取り組むため、飯能市では県が行うNext川の再生「水辺deベンチャーチャレンジ」に応募した。豊かな自然と調和した水辺空間をテーマに、より良い飯能河原の利活用ができるよう、県や地域住民などと連携しながら、模索することになった。
 22年1月に飯能河原の火気有料化エリアのエリア分けをして、22年の春の大型連休期間と夏休み期間に実証実験を実施。奥むさし飯能観光協会が主体となって、事前予約制として1人1000円を徴収した。有料化について、一部の利用者から否定的な意見も寄せられたようだが、運営スタッフが常駐し、エリア内を巡回するなどの対応を行い、ごみ処理代も利用料に含めるなどおおむね良好な反応を得られた。地域住民からも利用者のモラルが上がったことから好感をもたれたという。
 23年度から春の大型連休期間と夏休み期間を特定日に設定し、本格実施となった。収益の一部は、清掃活動や環境活動に充てるなど地域に還元している。
 昔農さんは手応えを感じているものの「事業自体は道半ばで、面で見たときには課題もあり、ゴールにたどり着いたわけではない」と話す。また「川ごとに特色があり、飯能河原での事例がそのまま当てはまるわけでもない」と指摘し、各地で河川を活用した「稼ぐ観光」に期待している。