神奈川県の黒岩祐治知事は、再整備の方向性を検討していた県民ホール(横浜市中区)について、建て替えによるリニューアルを行う方針を明らかにした。2025年1月で開館から50年を迎える県民ホールは、開館当時から使用している空調や配管などの設備が老朽化。25年3月末をもって休館することを決めていたが、大規模改修や建て替えなど再整備の方針が未定だった。
11月28日に開かれた県議会第3回定例会の代表質問で、田中徳一郎氏(自民党)が県民ホールの再整備について、「今年度末に休館が迫る中、現在の県の考えを明らかにするべき」とただした。
答弁には黒岩知事が立ち、23年度に実施した予備調査や再整備にかかる費用などを総合的に考慮した結果として「建て替えによる県民ホールの再整備を進めていきたい」と明言。建て替えに当たっては、横浜市が策定中の山下公園通り周辺地区のまちづくりビジョンを踏まえた検討が必要になることにも触れ、「市に県の考えをしっかりと伝えながら、再整備に向けた検討を着実に進めていく」と意気込んだ。
田中氏は、続いて「近隣のアリーナやホールとの差別化を図り、県の文化芸術の拠点にふさわしい施設にしていく必要性がある」として、新しい県民ホールをどのような特徴を持つホールにするのか再質問。黒岩知事は、「本格的なオペラやバレエなどの舞台芸術が上演できる施設としての再整備を念頭に置いている。障害者や高齢者など誰もが使いやすいようバリアフリーを意識し、これまで県民ホールが果たしてきた役割を担っていける施設にしたい」と施設整備の方針を述べた。
県民ホールは1975年に開館した。建物の規模は鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階地上6階建て延べ2万8476平方b。最大2493人収容可能な大ホールと定員433人の小ホールがある。
予備調査では、建て替えのパターンを3案に分けて設定。「理想的な施設整備」を実施するパターンでは、概算建設費は最大で486億円と試算した。座席数2200席の大ホールと1000席の中ホールを設ける想定で、延べ床面積は約3万4100平方b。「最低限の整備」の場合は168億円、その二つの「中間」に位置する案では420億円を見込む計算だ。
予備調査はシアターワークショップ(東京都渋谷区)が担当。
所在地は横浜市中区山下町3ノ1。
提供:建通新聞社