滋賀県土木交通部は、大津市の中心市街地を流れる吾妻川の氾濫防止として計画しているトンネル放水路について、その予備設計に近く取り掛かる。事業を所管する県大津土木事務所では、担当コンサルタントを4月25日開札の入札により決定、来年3月上旬までに業務を完了させる。難工事が予想されることから施工に関するスケジュールは未定だが、26年度以降に詳細設計・施工準備に入り、具体化となる見通し。
構想では、改修区間は県庁裏からJR大津駅手前までの大津市京町4丁目〜大津市逢坂1丁目・音羽台地先。現在流れている吾妻川の拡幅では、流下能力不足の解消困難なことから、河川下にトンネル河川を中心とした放水路を設ける。トンネルは、内径は2700_の円形水路で、シールド工法によって施工の予定。放水路全体の施工延長は約L1100b。放水路には大津市逢坂1丁目と音羽山の境界近辺に分水工、県庁南駐車場にシールドの発信立坑、名神高速道路大津インターから下がってきた部分にある箱渠との接続渠(3500_×3300_×L67b)が構造物となる。
また施工にあたっては、JR軌道敷下のH鋼杭や大津市下水道幹線(内径800_)との兼ね合い、分水工への土砂流入対策、住宅家屋が近接すること―など多くの課題がありこれらを設計等のなかで克服しながら具体化を目指す。
さらに県庁南駐車場をシールドの発信立坑とすることから大津市松本にある旧・日の出公舎の敷地を代替え駐車場として使用することも検討しており、今回の予備設計の中で計画を煮詰めていく。
吾妻川は、大津市逢坂1丁目の山中に発して北流、山を出てJR琵琶湖線に突き当たる付近(逢坂山トンネル出口付近)で東に転じ、その後、滋賀県庁の東で北に向き、大津港脇のおまつり広場公園(大津市島ノ関)で琵琶湖に注いでいる。
吾妻川は、13年(平成25年)に発生した台風18号により、上流では土砂崩れや破堤が起こり、JR大津駅東側の橋のあたりに流木や土砂が溜まって流れなくなったため、沿川で泥水や土砂が溢れその水が、一斉に低い所を伝い、琵琶湖の方へ流れていったため広域で家屋や道路の浸水が発生。それにより、県は早急な対策が必要と判断。14年に「第1期河川整備5ヵ年計画」を打ち出し対応を進めてきた。また、同河川にはJR線・京阪線が通過しており、また周辺施設に県庁舎などの主要公共施設が設置されている。18年に発生した西日本豪雨のような大雨が局地的に発生した場合、現地は人口密集地であり公共交通機関が含まれていることもあることから、整備計画自体も慎重にかつ利用者の迷惑にならないよう工事を進めなければならないため、同事務所では綿密に整備計画をまとめている段階。
なお、これまでの地質調査はキンキ地質センター、概略設計は東京建設コンサルタントが担当。
提供:滋賀産業新聞