神奈川県は、神奈川と静岡の県境をまたぐ道路(伊豆湘南道路)について、整備に当たって技術的な課題を整理するため、専門家による技術検討専門部会を設置する。また、整備の目標を見直し、新たに広域的な視点を加えた五つの柱を設定。この目標を達成するためには、「伊豆湘南道路は規格の高い道路とすることが望ましい」とした。3月28日に静岡県と共催で開いた伊豆湘南道路に関する委員会(委員長・中村英樹名古屋大学教授)で決定した。
伊豆湘南道路は、神奈川県西部地域と静岡県伊豆地域を結ぶ新たな東西軸として神奈川・静岡両県が検討している道路。両地域を結ぶ既存道路には国道1号と国道135号があるが、慢性的に渋滞が発生している。自動車専用道路網が不足している箱根の南回りに道路を整備することで、物流や観光ルートの流れを整えることや、災害時に備えて道路の冗長性・多重性を持たせることなどを目指している。
委員会では、広域ネットワークの観点から見た地域の現状と課題を整理。整備の目標(政策目標)として、▽「物流」走行性・速達性の向上による広域物流交通の円滑化▽「防災」大雨・大雪・津波・富士山などの火山災害などに備えた信頼性の高い道路ネットワークの確保▽「観光」速達性・定時制の向上、伊豆半島などとの広域周遊ルートの形成による観光振興の支援▽「安心・安全」広域交通と地域の交通の分離による安全で快適な走行環境の確保▽「住民生活」地域間相互のアクセス性向上による快適で安心な暮らしの向上―の5点を設定した。
伊豆湘南道路を高規格道路として整備する場合、トンネルが主体となる可能性が高い。伊豆湘南地域は火山性の脆弱(ぜいじゃく)な地質で、北伊豆活断層帯などの活断層も多く存在するなど、地質や地盤のリスクがある。専門家の意見を聴取し技術的な課題を整理するため、技術検討専門部会を早期に設置する考えだ。
中村委員長は、「近年は気象災害も激甚化しており、同じような場所を通るルートだけではカバーできなくなってきている。伊豆湘南道路は、従来の東名・新東名とは異なるルートにより地域と連絡する。この意義が一層高まってくるのではないか」と話した。
提供:建通新聞社