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日刊岩手建設工業新聞社
2025/04/23

【岩手】日本塗装工業会県支部・松田隆二支部長に聞く 塗装業界の持続的発展へ 働きがいのある職場環境

 設立70年を迎える日本塗装工業会県支部(松田隆二支部長)。塗装工事業界の健全な発展、塗装技術・技能の伝承と技術者・技能者の社会的な地位向上、良好な景観形成と社会資本の保全などに、長きにわたって貢献し続けてきた。公共施設の長寿命化など塗装工事業界への期待が高まる中、現場の最前線で活躍する若年労働者の育成確保と働き方改革、技能者の処遇改善などへの対応が求められている。松田支部長に本県塗装工事業界の課題と、今後の展望について聞いた。

 ―日塗装県支部が70年の節目を迎えるに当たっての所感を。
 1955年6月の設立以来、好不調の波を経ながら現在まで支部活動を継続してきた。歴代の役員、会員の努力に改めて敬意を表するとともに、70年の節目に支部長職を仰せつかっていることに、身が引き締まる思いだ。弊社会長も96年から07年まで支部長を務めており、企業経営と団体運営を両立させる苦労があったと思う。私自身も次世代にバトンを引き継ぐ一人として、先人の思いをつないでいきたい。
 日塗装の重要な活動の一つであるペインテナンスキャンペーンでは、本県は常に全国のトップ10に入っている。経済規模がさほど大きくない本県で、都市部に負けない実績を出していることは、支部会員の皆さんの理解と協力の成果であり、感謝を申し上げたい。

 ―県内塗装工事業の現状に対する見解を。
 東日本大震災からの復興需要が一段落し、官公庁発注工事は長期的な減少傾向にある。また民間工事もドラッグストアなど一部の業種を除き、コロナ禍による経済活動の低迷が設備投資にも影響している。米国トランプ政権による相互関税が、裾野の広い自動車産業を中心に国内製造業の設備投資に与える影響も不透明だ。塗装工事業が発注者から選ばれる仕事として継続できるか、真価が問われる時代に入った。

 ―インフラや公共施設の新設から、橋梁や建築物の長寿命化などへ、塗装工事へのニーズは高まるのでは。
 構造物や公共施設の長寿命化が主流となるのに伴い、使用される塗料も耐候性の高い製品が標準仕様になると考えられる。一方、仕事量の減少に伴い価格競争の激化が懸念され、グレードの高い製品や新工法・新技術を価格に反映できるかという課題が生じてくる。
 国では設計労務単価を引き上げ、賃上げを推奨しているが、ダンピングはこの流れに逆行する行為だ。週休2日や時間外労働の罰則付き上限規制に対応して持続的な企業経営をするためにも、安易なダンピング的な受注はできなくなると思う。適正価格での受注に向けて、付加価値の高い仕事を行いながら、業界のPRにも取り組んでいく必要がある。

 ―業界の課題として、働き方改革への対応も挙げられる。
 元請けの場合は天候不順や週休2日などを織り込んだ上で、ある程度余裕を持ったスケジュール管理ができるが、下請けで入った場合は前工程の影響が避けられず、工期間近ではタイトな工程を組まざるを得ない場合も出てくる。真に現場で働く人のためになる働き方改革を進めるためにも、発注者から元請け、下請けまで施工プロセス全体で適正な工期設定の在り方を議論し、必要に応じて柔軟な工期延長も考えていく必要がある。

 ―人手不足への対応や、若年労働者の入職の状況は。
 日塗装は建設技能人材機構の正会員団体として、技能実習生の受け入れに対する窓口を開いている。また女性が塗装に対して関心を持ってもらえるよう、資生堂ジャパン鰍ニタイアップしたイベント「けんせつ女性ビューティーセミナー」を開催している。
 私自身は、普段の塗装工事の現場こそが一番のPRの場だと思っている。塗装工事の現場で働く人の姿を通して、塗装工事に関心を持ってもらいたい。県支部で実施している年1回のボランティア活動も塗装工事業をPRする機会になると考えている。
 同時に離職者を出さないための努力も重要だ。塗装の道を選んだ人が、生涯にわたって塗装の仕事に打ち込めるよう、より働きがいのある職場環境づくりに努めていく必要がある。適正な労働時間や給与体系をはじめとする処遇改善、コンプライアンスの徹底によるハラスメントのない職場づくり、しっかりとした人材育成などに取り組んでいきたい。

 ―今後の支部活動についての考えは。
 日塗装の基本方針の一つが「業界の持続的な発展」。CCUSへの登録促進などを通じた技能者の地位向上と処遇改善、次世代の経営者や後継者育成に向けたトップリーダー研修などに支部としても取り組んでいく。
 また本県独自の取り組みとしては、県当局との意見交換の実施を提案している。県では25年度から、総合評価の中にチャレンジ型を導入するほか、土木系と土木系以外に分類するなど、塗装工事業にとっては大きな前進。専門性の高い企業の受注が図られる入札制度の在り方など、県塗装工業組合と連携しながら県当局と協議を進めていきたい。

提供:日刊岩手建設工業新聞