熊本県土木部は、今年度から公共土木施設の災害報告と災害査定の効率化を図る考えだ。災害報告では独自に開発したシステム(パスカルモバイル)を導入。災害査定はペーパーレス化を実現するためタブレットを使用し、設計資料をデータ化しクラウドに格納することを指示していく。
2024年度から土木部は、公共土木施設の災害査定にデジタル技術を活用している。全国でも先行した取り組みで、災害復旧における調査測量設計の安全性向上や業務の効率化を目指す。運用にあたっては熊本県測量設計コンサルタンツ協会(内田貴士会長)とともに実証実験に取り組んでいる。
今回、デジタル化の一環として、災害報告にシステムを取り入れる。従前の公共土木施設管理データベースを活用しており、導入することで、業務の省力化に加え、被災状況が迅速かつ効率的に共有できる。想定する利用者は県、市町村職員、関係団体職員。
これまで委託業者は、被災現場から自社に戻った後、調査内容を指定様式(エクセル)に入力し、メールで発注者に報告書を提出していたが、今後は現場でスマートフォン等を用いてシステムに調査内容を入力することができる。入力画面の基本情報には、路線名や延長、被害概要、復旧概要などの項目があり、画像は1カ所あたり20枚程度まで保存可能。座標値が自動添付され、地図上での確認が可能となる。
ペーパーレス査定は、実地査定や対面の机上査定、リモート査定において、データ化した写真や図面、動画などをタブレットやモニターを使用し、査定官と立会官に被災状況を説明することを指している。導入するメリットとして、申請者は印刷やファイリングなどの事前準備の作業負担が軽減できる。内容確認や360度カメラで撮影した動画の使用も容易になり、野帳や図面への書き込み、修正が何度も可能となる。
なお災害報告、ペーパーレス査定ともに、従来の手法でも対応する。
システムの運用にあたり土木部は、稼働後に各地域振興局や市町村から意見を聴取し、適宜改善する。また現時点では災害報告までの利用となっているが、災害査定や工事進捗管理等に活用できないか検討を行っていく。
■熊測協の会員対象に災害査定講習会開く
4月25日に県は、熊本県測量設計コンサルタンツ協会の会員企業を対象とした災害査定に関する講習会を開催した。
会員企業から技術者約130人が参加。県土木部河川課の赤木宣文審議員、松本侑政参事、内田圭祐主任技師が講師を務め、災害査定のペーパーレス化と災害報告システムについて説明した。
参加者からは「360度カメラで撮影したデータ以外で必要な写真は」「インターネットにアクセスできない現場で、システムに入力するにはどうすればよいか」などの質問があった。
赤木審議員は「デジタルは道具であり、あくまでも安全性の向上と業務の効率化を目指している。まだスタートラインに立った状態で、皆さんの声を聞きながら、より良いものをつくり上げたい」と述べ、協力を呼び掛けた。
熊測協の浦上善穂経営広報委員長(ワコー)は「近年、災害は激甚化・頻発化しているが、対応できる技術者は増えていない。ミスマッチを解消するため、デジタルを活用し、効率化を図ることが今後主流になってくるのではないか」と話した。
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