熊谷市は、同市内全域で作成された3D都市モデルのデータを広く活用する方法を模索している。利用法を提案し、実際に活用する仕組みを開発する業務を委託するため、公募型プロポーザル競争で事業者を募集している。デジタル空間に再現した同市内のデータを、シミュレーションなどを通じて広く普及させていく狙いだ。
熊谷市の3D都市モデルは、国土交通省のプロジェクトの一環で、県内ではさいたま市などとともに熊谷市が選定されたことを受けて、2021年度に整備された。市街地などの現実の街並みを、「デジタルツイン」として立体的に再現してデータ化するもの。同市では、市内全域の隅々までを対象とし、面積で約160?、再現された建物は10数万棟に達した。
ビルや家屋などのほか倉庫、道路、鉄道、植物などがデジタル空間に立体的に外観が配置された。その後も、データは更新を継続。ウェブ上で公開もされ閲覧できる。
また、24年度には、埼玉県の調査を通じて、熊谷市が建物の詳細データを収集して提供。3D都市モデル内で、個別の建物の外観をクリックすると、木造や鉄骨造といった建物構造や階数、延べ床面積、用途といった情報が画面上に表記され、閲覧できるようにシステムを作り込んだ。
従来から普及していた画像データなどとは違って、3D都市モデルはコンピュータ上のシミュレーションなどにも適用できるメリットがある。
同市では、市内を流れる荒川や利根川などが氾濫したと想定。時間経過とともに、河川から市街地などに浸水してくる状況をシミュレーションしてみることに活用するなどしてきた。
シミュレーション結果は、地元自治会や防災士らと共有するワークショップを開くなどしてきた。同市都市計画課は「活用機会を創出して、市民らへの利用を広げていきたい」と説明する。市民目線での政策立案や、市民のまちづくり参画推進を後押しする仕組みになる。
シミュレーションなどでの活用が普及すれば、「結果をもとにして、事業者自身が、再開発の在り方を検討し、提案したりすることにも役立つ」(同市都市計画課)という。
例えば、3D都市モデル内で、仮想の高層建築物を新設すれば、その日陰が季節ごとに影響を及ぼす周辺範囲や程度などの状況を詳細に把握できるという。
プロポーザル競争の参加希望事業者は9日までに熊谷市都市計画課(大里庁舎)宛てに関係資料を提出する。業務は26年3月までを委託期間とし、実際に3D都市モデルを活用した仕組みや報告書などを提出するほか、浸水災害についての講座や高校生向けのまちづくり教育講座を開催することなども求められている。
提供:埼玉建設新聞