北海道建設新聞社
2025/05/19
【北海道】国交省が積丹で道内初の遠隔測定/地籍調査加速へ山村部536㏊測量
【小樽】国土交通省は、道内での地籍調査を加速させるため、積丹町内でリモートセンシング技術を活用した調査をする。航空レーザー測量データなどを使った新たな調査手法で、道内初の取り組み。従来の調査と比べ人手やコストなどを大幅に削減できる。今夏にも山村部536㏊を測量する運び。道内自治体などを対象とした現地研修会を開き、技術を全道に広めたい考えだ。
地籍調査は、国土調査法に基づいて毎筆の土地境界、面積などを市町村が主体となって調べるもの。防災対策や社会資本整備の効率化といった効果が期待できる。能登半島地震の復旧が遅れている要因の一つとして地籍調査が進んでいないことが挙げられていて、災害復旧の迅速化や所有者不明土地を抑制する観点から重要性が高まっている。
道内の地籍調査進捗率は、24年度末時点で62%と全国平均53%を上回っているものの、都心部や山村部を中心に進んでいない。24市町村では調査を休止、8市町村は調査未着手となっている。特に山村部は、険しい地形やヒグマとの遭遇といった危険が伴う。土地所有者らの現地立会や測量が困難となり、森林境界の明確化や林業振興への影響が懸念されている。
国交省は市町村の地籍調査を加速させるため、20年度から直轄でリモートセンシング技術を活用した航測法による地籍調査を九州や東北地方など全国各地で実施してきた。
航測法は、空中写真や航空レーザー測量から得た高精度なリモートセンシングデータを活用した新手法。主要な基準点のみを現地で測量し、上空からの写真や画像から土地の境界点の座標値を算出する。測量機器を設置する従来手法と比べ、コストは約15%削減できるほか、広範囲での測量が可能となる。
今回は積丹町婦美、野塚、美国地区の分収造林地や隣接する町有林など山村部536㏊で航空レーザー測量を実施。このうち分収造林団地婦美六地区119㏊をモデル実証調査として筆界推定図を作成する。全道に取り組みを広げるため、北海道開発局や道、市町村などを対象とした現地研修会を開き、山村部での地籍調査を加速させる考えだ。