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北海道建設新聞社
2025/06/05

【北海道】道が33市町村対象に日本海沿岸の地震・津波被害を想定

 道は、稚内など日本海沿岸の33市町村を対象とした地震・津波被害想定を公表した。市町村別に見ると、全壊棟数が最も多いのは稚内市(発生時期は冬・夕)で9600棟。津波による死者数も稚内市が最多で、夏・昼、早期避難率20%という条件で4000人に上る。地震動を算出する断層モデルが陸地に近いため、揺れが大きく津波到達時間が短いのが特徴。避難場所の確保、意識醸成など早期避難に向けた準備が被害軽減のポイントとなる。(4面に関連記事)
 ■最大津波高はせたな26.9m
 2017年に「北海道日本海沿岸の津波浸水想定」で設定した15の断層モデルに応じた建物、人的被害などを夏・昼、冬・夕、冬・深夜の3パターンで推計。早期避難率が70%と20%という避難行動の違いも反映した。
 対象は稚内、礼文、利尻、利尻富士、豊富、幌延、天塩、遠別、初山別、羽幌、苫前、小平、留萌、増毛、石狩、小樽、余市、古平、積丹、神恵内、泊、共和、岩内、蘭越、寿都、島牧、せたな、乙部、江差、上ノ国、奥尻、八雲、松前の33市町村。最大津波高は既に公表済みの数値を使用していて、せたなが26・9m、神恵内が26・6m、松前が26・3mなどとなっている。
 全壊棟数は稚内市が突出して高く、断層モデルや発生時期は異なるが礼文、利尻、利尻富士、天塩、石狩、せたな、江差、松前も1000棟を超えた。津波による死者数(早期避難率20%)は、稚内市以外で礼文、島牧、せたな、乙部、江差、奥尻、松前が1000人を上回る。死者数は避難率によって大きく数値が変わり、稚内市の場合は70%だと1800人まで減るなどいかに早く逃げるかが命運を分けそうだ。
 ■災害関連死含め273事例を記載
 定数評価だけではなく、数字で示さない定性評価も30項目273事例を記載。能登半島地震を踏まえたものとしては災害関連死があり、暖房喪失などによる避難施設や在宅での低体温症、避難所の劣悪な生活環境での健康被害などを想定した。このほか、鉄道や港湾、空港、上下水道、電力、通信といったインフラ・ライフライン被害、道路閉そく、孤立集落、複合災害なども挙げている。
 公表内容について、北海道防災会議地震火山対策部会地震専門委員会の減災目標設定ワーキンググループで座長を務める北大広域複合災害研究センターの岡田成幸客員教授は「他の想定に比べ被害は少ないが、決して小さな数ではない」と強調。冬季でも道路除雪などで夏季と同じような避難環境を整えれば避難時間を短くすることができ、被害を大幅に減らせる可能性があるとし、「近くに逃げ場を作る、自分自身の避難計画を作ることが非常に重要」と訴える。
 また、短期的には住宅の耐震診断・補強、避難所における災害関連死対策などすぐに取り組めることと、中期的には効果発現に時間がかかる公共施設耐震化、防災教育など、段階に応じた対策を取る必要性も指摘。長期的には、逃げなくてもいいまちづくりとして集落移転とインフラ整備といった根本的な取り組みを提案し、「国の財政支援が不可欠」と述べた。
 詳細は道のホームページに掲載。道は被害想定を各市町村の対策に役立ててもらうとともに、減災計画をできるだけ早期に策定する見通し。唯一未策定となっているオホーツク海沿岸の被害想定に関する議論も並行して進める考えだ。
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