新宮川水系で既存ダムを活用した洪水調節機能の強化などを検討している国土交通省近畿地方整備局は、先例地である電源開発の糠平(ぬかびら)ダムを視察した。
北海道開発局では、北海道の十勝川水系のさらなる安全度確保に向け、糠平ダムを含む流域内の発電ダムなどを最大限活用した事前放流などの有効活用を調査・検討するため、2024年度に糠平ダム調査事業所を設置し、治水機能増強検討調査に着手している。
今回、近畿地整の常山修治河川部長と電源開発西日本支店の奥村裕史支店長代理が合同で糠平ダムを視察。ダム管理者の電源開発から貯水位運用やダムの操作、洪水時の放流と下流への影響などの説明を受け、情報交換し、治水機能をどのように増強するかの検討状況を確認した。また、糠平ダム上流の幌加(ほろか)ダムでは土砂バイパスの整備を行なっており、新宮川でも同じく土砂対策も必要となることから、併せて視察した。
近畿地整は、11年9月の新宮川の出水以降の濁水長期化や総合土砂管理の早期実現、既存ダムを活用した洪水調節機能の強化といった諸課題について検討するため、24年度に電源開発と協同検討に関する協定を締結している。
新宮川水系では、11年9月の台風12号洪水を対象とした再度災害防止のための対策として、11年から河川激甚災害対策特別緊急事業に着手し、計画高水流量1万9000立方b/秒を安全に流下させるための河道掘削などを実施してきた。
21年10月には、長期的な河川整備の基本方針を定めた河川整備基本方針を、気候変動の影響による将来の降雨量の増大を考慮するとともに、流域治水の観点も踏まえたものに変更。22年3月には新宮川水系(熊野川)河川整備計画を策定している。
近畿地整は、「流域総合水管理における治水、利水の利益相反となる課題の解決や濁水低減による環境改善など新宮川流域全体を踏まえ、水系内の各種既存ダムの有効活用について、より効率的な整備に向けて検討を進めていきたい」としている。
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提供:建通新聞社