北海道建設新聞社
2025/06/23
【北海道】道内で相次ぐ「ポットホール」防ぐ凍上対策/自治体、制度延長求める
寒冷地特有の現象で、雪解け後に道路に穴が開く「ポットホール」を抜本的に防ぐ凍上対策を道内の市町村が相次いで進めている。総務省が2019年度に創設した緊急自然災害防止対策制度が財源だが、25年度から工事の範囲が広くなったためだ。しかし制度の年限が25年度で自治体が延長を求めている。アスファルト合材の需要低迷に直面する北海道舗装事業協会(中田隆博会長)など業界団体は、国土強靱化につながる供給量の高まりを歓迎し、国への26年度要望で制度の延長を盛り込む方針だ。
同制度は、防災・減災、国土強靱化対策と連携して地方自治体が単独で防災インフラを整備できる。25年度からは積雪寒冷特別地域の道路で行う凍上災害の予防・拡大防止対策として、舗装の表層とともに、基層、路盤にまで対象を拡充した。道内は全域が積雪寒冷特別地域に指定されている。
北見工大の富山和也教授(舗装工学)は「寒冷地の道内では凍上が地下80pまで及ぶことがある。路盤が凍って隆起するとひび割れが多発する。表層だけでなく、路床の砂利部分が特に凍上しやすく、基層や路盤までを含めた対策で効果が見込まれる」と制度の拡充を評価する。
■起債充当率高く条件緩和で好評
札幌市は25年度当初予算に計上したオーバーレイやポットホール修繕などの財源を振り替える。申請総額は40億円に上り、総務省と協議中だ。所管課の担当者は「他の起債メニューと比べてかなり有利。国に対し、継続を要望している」と話す。
旭川市は24年度末に発注したゼロ市債工事に活用。冬季の凍上で損傷した生活道路の路盤改良が主だ。市の担当者は「他の起債より充当率が高く(100%)、地方交付税のバックも受けられるため非常に使い勝手がいい」という。
紋別市は25年度当初予算で3路線のオーバーレイに投じた。土木課の担当者は「これまでは表層に限定されていてやりづらい部分があったが、条件が緩和され使いやすくなった」と好評だ。
当初予算ではこのほか、石狩市が9路線に工事費約3億円を計上。北広島市は市道広島輪厚線改良に充当し7月2日に開札予定だ。室蘭市は20路線に事業費2億2000万円を措置。登別市も5路線に事業費8000万円を充てた。北見市は4路線の改修に事業費4000万円ほどを計上。倶知安町は3路線の改良と凍上抑制に工事費9600万円を投入した。
網走市は第2回定例議会の補正予算案に東1丁目通線など6路線に事業費1億3000万円を盛り込んだ。市内全域で凍上による舗装の破損やポットホールなどが発生し対応が追い付かない中、制度拡充を受けて25年度から対策に乗り出した。
滝川市は当初予算に事業費1億5000万円を計上。第2回定例議会に事業費5000万円を提案した。
制度を活用していない自治体の担当者の意見として、釧路市は「要件に合致して進められる事業がない」、富良野市は「基本的には交付金と補助事業で道路改良をしている」、天塩町は「町発注の道路工事が少なく今回はタイミングが合わなかった」などがあった。
池田町の担当者は「他事業に予算が割かれ活用する余裕がなかった」と打ち明ける。浦幌町と広尾町の担当者は「気候上、凍上対策の必要性が薄い」と口をそろえる。名寄市と士別市は凍上関係での活用、長沼町は事業費の活用がない状況。伊達市は情報収集中だ。
ただ、活用、未活用どちらの自治体からも共通して多く上がるのが「制度が延長されれば活用を検討したい」との意見だ。
■事業量確保へ各団体が後押し
北海道アスファルト合材協会(玉川裕一会長)によると、24年度の道内アスファルト合材生産量は216万8000tで、ピーク時の1987年度と比べて3割ほどに落ち込んだ。23年度は統計史上過去最低の209万tを記録し、年間出荷量200万t割れが目前に迫っている状況だ。
プラント数も右肩下がりで減り続けている。95年度に285基あったプラント数も、数十年にわたる需要減で統合や休止が進み、24年度は98基にまで減少。「2024年問題」で物流能力が低下し、地方や離島ではプラント空白地帯の発生を危惧する声も聞かれるようになった。
道舗装事業協会の太田広専務理事は「多くの自治体が制度を活用している。制度が拡充されてからまだ1年もたっておらず、やるべき修繕はまだまだある。業界としても、もっと活用されることを期待している。制度の延長を求める声も多いため、これから検討する国への26年度要望に盛り込みたい」と自治体を後押しする考えだ。
道アスファルト合材協会の伊藤憲章事務局長も「合材の出荷量が落ちている中で明るい話題。舗装事業協会と歩調を合わせ要望したい」と話す。
日本道路建設業協会北海道支部(中山晶敬支部長)の広瀬哲司事務局長は「事業量が増えればプラントが稼働し、業界の発展につながる」と期待する。