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北海道建設新聞社
2025/06/26

【北海道】核のごみ巡り国の政策に一石/片岡寿都町長に展望を聞く

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を巡り、寿都町が最終処分場選定の第1段階となる文献調査に応募してから約4年半が過ぎた。国の政策に「一石を投じたい」として決断を下した片岡春雄町長が本紙の単独インタビューに応じ、国のエネルギー施策への危機感と、交付金に依存しない町政運営「稼ぐまち」づくりへの展望を語った。(小樽支社・五十嵐命、仲道梨花記者)
 −応募から4年半、今の率直な思いは。
 当初から一貫して「一石を投じたい」という思いは変わらない。寿都のすぐ近くには泊原発があり、再稼働も迫っている。処分場の問題は、先送りできるものではなく、国全体のエネルギー政策としてもっと議論すべきだと危機感を抱く。
 一方で「核のごみ」に関して不安ばかりが押し出されている。現段階は「文献調査」であって、処分場の建設を決めたわけではない。仮に次の段階である概要調査へ進む場合でも、住民投票で賛否を問う考えだ。「調査=受け入れ」ではないということを、あらためて強調したい。
 決して交付金目当てではないと断言したい。風力発電による売電収入やふるさと納税も堅調で、一般財源は確保できている。交付金は保育所や給食センター、ごみ処理施設など、町民生活に直接関わる分野に活用している。半面、主要産業である漁業は漁獲量の減少に伴い衰退し、人口も減っている。何事も挑戦するには、それを支える財源が必要。住民サービスの低下を招かないよう備えとして町政を進めている。
 −処分地選定プロセスについてどう感じているか。
 処分場は国民全体の問題であり、もっと広く議論される環境を国がつくるべきだ。今のような「手挙げ方式」ではなく、国が責任を持って主導するプロセスが必要だと感じている。経済産業省・資源エネルギー庁は全国で200自治体以上を訪問したというが、もっと国会議員や都道府県議員、全国の原発を抱える自治体などが積極的に議論するべきだ。
 交付金の使途についても、経産省に交付金を使って新たな風力発電設備を設けたいと要望したが認められなかった。使途が制限されるのであれば、地方にとっては大きなメリットがあるとは言い難い。自治体の意思で使えるようにした方がいい。
 −今後の展望について。
 これまで勉強会を開いて理解促進に努めてきた。町内会単位といった小規模な勉強会を開くなど、ざっくばらんに話せる場を設けたい。
 今後も町民の声をよく聞きながら、財源確保と将来を見据えた投資を両輪とし、「稼ぐまち」を目標にしながら持続可能なまちづくりを目指したい。
 かたおか・はるお 1949年生まれ、旭川市出身。75年に寿都町役場へ入職し、教育委員会学校教育係長、農政課長、保健衛生課長などを経て、2001年に寿都町長に初当選した。