横浜市港湾局は、山下ふ頭の再開発に向けた事業計画を策定するに当たっての「基本的な方向性」を明らかにした。旅の目的地となるような緑と水辺空間がある拠点をつくり、市域全体の活性化と経済成長に寄与する開発を目指す。交通アクセス動線の強化や防災力向上につながるインフラ整備の必要性についても盛り込んだ。6月27日の市会・港湾委員会で報告した。
山下ふ頭の再開発を巡っては、統合型リゾート(IR)の誘致撤回を受けて2023年度に創設した検討委員会がまちづくりのおおまかな方向性をまとめ、24年12月に答申書を山中竹春市長へ提出した。
今回は答申書を踏まえた「基本的な方向性」として、市の考え方をまとめた。
それによると、再開発のテーマには@世界に誇れる、魅せる『緑と海辺』A持続可能なまちを支える明日へのイノベーションB活気に満ちあふれ、周辺へと広がる新たな賑わい―の三つを掲げた。関内・関外地区やみなとみらい21地区だけでなく、旧上瀬谷通信施設地区や市域全体で計画されている事業との連携や波及効果の広がりを狙う。
「緑と海辺」に関しては、臨港パークから山下公園に至る導線と連続した水際線のルートを形成するイメージ。まとまった緑地や、建物と一体となった立体的な緑も確保する考えを示した。
企業や研究・教育機関を呼び込む拠点としても活用する方針。最先端技術の実証に使えるフィールドも用意する。脱炭素化やグリーン社会の実現に貢献する技術、次世代交通システムなどもまちづくりに取り入れる方針だ。
加えて、これらのまちづくりを支える土台となるよう、利便性と回遊性向上につながる交通機能の強化と大規模災害に備えたインフラ整備に取り組む。
海上からの緊急物資を受け入れ・輸送する拠点を形成し、旧上瀬谷通信施設地区に整備予定の広域防災拠点と連携することも視野に入れている。国直轄事業となる臨港幹線道路に関しては、再開発に併せて整備できるよう協議を進めている段階だという。
これらの方向性について9月9日まで市民意見を募集した後、民間事業者へのヒアリングも実施する予定。25年度中に事業計画案をまとめ、26年度ごろの事業化を目指す。
当日の港湾委員会では、今回の再開発は民設民営を基本に検討していることから「経済波及効果を実現するためには、民間事業者へのヒアリングが重要」との意見が議員から出た。
また、ふ頭の埋立てを伴う形状変更や、規制緩和(高さ規制31b)の可能性についても質問があり、市側は「事業者の提案を踏まえて検討していきたい」と答えた。
提供:建通新聞社