神奈川県の統計によると、県内の小規模建設業(従業員5〜29人)で就業者が3年続けて増加していることが分かった。コロナ禍で一時大きく減少したが、2022年から増加に転じてコロナ前の水準の14万人台を回復。特に正社員の増員が鮮明になっている。一方、県内建設業では有効求人倍率が5倍を超えるなど著しい人手不足が慢性化し、こうした傾向が続くかは見通せない。
県内小規模建設業の就業者の状況をみると、12年を底に増加傾向にあったが、18年の14万4336人をピークに21年までの3年間で1万3000人余り減少した。その後、回復に転じ、23年は約1000人、24年は約5000人増え、新入社員が入社する25年4月時点では15万0803人と24年12月から6000人余り増加している。
就業者数の増加に応じて、パート比率が急速に低下し、正社員の比重が高まっている。直近ピーク時の18年にパート比率は12・2%だったが、以降、その比率は急速に下がり、24年は4%となった。全産業の平均はここ10年間、35〜36%で推移して大きな変化は見られず、建設業特有の状況だ。建設業協会の役員企業に聞くと「先行きの不安もあり、特にコロナ禍では事務作業をパート社員に依頼した。突発的な不安が落ち着き、先を見据えた採用活動に転じたのではないか」と話す。
女性正社員は10年で2割増
パート比率の低下に合わせて、女性正社員が少しずつ増えていることも注目される。25年3月時点の正社員は1万8464人と10年前に比べて19・6%増加。建設業全体の13・2%増に比べて、伸び率が高い。25年4月の女性正社員も、3月から413人増加している(新卒者、事務・技術の職種など内訳は不明)。女性の技術職員を毎年採用しているという協会役員企業からは、期待通りの優秀な人材が多く、退職者はほとんどいないという声が聞かれる。
県内建設業の24年の離職率は1%と全産業の2・11%の約半分。同業者間の転籍は多いものの、建設業を離れる比率は低い。
ただ、入職率も1・17%と全産業平均2・16%の半分程度しかないのが大きな課題だ。女性も仕事を続けられる社内制度や、現場の清潔なトイレの整備など、働きやすい環境づくりが進んでおり、入職者をいかに増やすかが建設業の将来のかぎを握っている。
提供:建通新聞社