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建設経済新聞社
2025/07/11

【京都/滋賀】近畿地方整備局 齋藤博之・新局長が就任会見 事前防災や減災など計画的に 建設業は地域社会に必要不可欠

 近畿地方整備局の齋藤博之局長は9日、大阪市中央区の大手前合同庁舎で就任会見を開いた。
 齋藤局長は就任にあたり、3つの方針を掲げ、「1点目は防災・減災、国土強靭化をはじめとする危機管理について。近年全国各地で毎年のように災害が発生している。近畿地方整備局管内においても、今後30年で発生する確率が70%から80%と予想されている南海トラフ地震をはじめ、気候変動に伴う豪雨災害の頻発化・激甚化、豪雪災害など様々なリスクが想定されている。我々は常にこれらのリスクと隣り合わせで生活していると言っても過言ではない。そのような中、災害対策基本法の一部を改正する法律、いわゆる災対法の改正が6月に公布、一部施行されたことを受け、南海トラフ地震等の大規模広域災害も、自治体等を迅速かつ的確に支援できるようにTEC−FORCE(テックフォース。緊急災害対策派遣隊)の強化、あるいは民間団体や地方公共団体の関係機関との連携強化を進めていきたい」「今年6月に国土強靭化の第1次実施中期計画が閣議決定された。実施中期計画の中で特に必要となる施策の事業規模については、昨今の資材価格や人件費の高騰、能登半島地震での教訓などを踏まえて、5年間で概ね20兆円強程度を目途とすることとされている。今回の特に必要な施策の中で、例えば埼玉県八潮市の道路陥没事故なども踏まえ、社会的影響が大きい上下水道管路の更新や、多重化・分散化によるリダンダンシーの確保の施策などが新たに追加された」「近畿地方整備局としては、引き続き国民の皆様の安全安心の確保に向け、流域治水、道路ネットワーク整備、上下水道施設などのインフラの老朽化対策など、必要な事前防災や減災等の対策を計画的かつ迅速に推進していきたい」「出水期を迎え、これから台風シーズンを迎える。いざという時の災害対応に備えて、日頃から自治体をはじめとして関係機関と良好な関係を構築して、地に足のついた議論や情報交換に努めていきたい」と考えを述べた。
 2点目として挙げたのは関西経済を支えるインフラ整備について。「4月に大阪・関西万博が開幕しました。万博は世界各国から多くの人が訪れる、またとない機会です。この機会を最大限に生かし、関西の魅力を発信するとともに、万博を契機とした地域経済のさらなる成長が期待されている。近畿地方整備局では、道路や港湾などで万博開催時の来場者の円滑な輸送や、交通円滑化の取り組みを関係機関と連携して進めてきた。具体的には例えば日本政府館の建設、あるいは、新大阪駅と万博会場の夢洲へ向かうシャトルバスのルートとして淀川左岸線(2期)の暫定的な利用、あるいは、物流対策の一環として夢洲コンテナターミナルの渋滞防止、懸念されていたが、情報通信技術を活用し対策を推進して、今のところ大きな問題とはなっていないと聞いている」「万博以降、なにわ筋線の開業、北陸新幹線の延伸やリニア中央新幹線の開業など、民間投資が進み、経済活性化の大きなチャンスです。また関西の強みである医療やサイエンス分野に加え、新エネルギーやカーボンニュートラルなど、新しい課題に対応した新たな産業を関西がリードしていくことが重要と考えている。このような関西の経済、産業活動を支えるためにも道路ネットワークの整備を推進するとともに、交通の結節点であるエリアでのまちづくりや再開発などについて、地元自治体や経済界としっかりと連携していきたい」「港湾においても国際競争力の強化に向けて、国際コンテナ戦略港湾の阪神港の機能強化を図るほか、一体的に脱炭素化の取り組みを進めるカーボンニュートラルポートの実現も目指す」「これらを踏まえて、近畿地方整備局が事務局となり、関西の長期的な将来ビジョンを定める関西広域地方計画の策定作業に取り組んでいく。今のところ、今年度中になんとかまとめたいと思っている。この計画に関西の明るい未来を示していきたい」と述べた。
 3点目は魅力ある建設業に向けた取り組み。「建設業は高齢化や労働人口の減少などにより、人材が不足し、長時間労働が課題となっている産業でもある。令和6年度にはインフラ整備の担い手、地域の守り手である建設業がその役割を果たし続けられるよう、担い手確保、生産性向上、地域における対応力強化を目的に担い手三法が改正された。また昨年4月より、時間外労働の上限規制が建設業でも適用された。こうした建設業の労働環境改善のために、国土交通省では〈給与・給料が良い〉〈休暇が取れる〉〈希望の持てる〉建設現場、さらには次世代を担う若者に〈かっこいい〉と関心を高めてもらうための機会の創出に取り組んできた。新3Kの次に〈かっこいい〉を入れる人と入れていない人がいるが、私は個人的には〈きれいな現場〉そういったものでもいいのかなと思っている。給与については、労務単価も13年連続で引き上げており、平成24年に比べ令和7年度は1・85倍になっている。賃上げに取り組んだ企業には、総合評価落札方式における加点を実施している。休暇については、適切な工期設定の下、週休2日制を標準化する取り組みなどを行っている。土木工事書類作成スリム化ガイドラインなどを作成し、書類の簡素化、地方公共団体とも連携した工事書類の共通化などにも取り組んでいる。技能労働者の減少や時間外労働の上限規制などを踏まえると、生産性向上、特に労働生産性の向上が必要であり、それに向けて、建設プロセス全体へのBIM/CIMモデルの活用、監督検査のリモート化に加えて、工事検査のリモート化の推進、プレキャスト工法の積極的活用及びICT活用など、インフラDXの取り組みを推進するとともに、近畿インフラDXセンターでのDX研修を活用するなど、人材育成などにも注力していきたい」「建設業は、自ら手がけたものが後世に目に見える形で残せる魅力的なものであり、地域の雇用を支えると同時に、人々の生活を支え、豊かにすることや、地域経済の活性化にも寄与する、地域社会にとって必要不可欠な存在であり、あらゆる取り組みによって、担い手の確保・育成に取り組んでいきたい」と述べた。
 その後の質疑では、建設業への期待、連携について「建設業と我々は二人三脚だと思っている。能登半島地震においても地元の建設業者は極めて大事。阪神淡路大震災、東日本大震災においても初動が大事で、地元の建設業者がおられるから、迅速に対応ができる。色んな業界団体と日頃より意見交換しているが、耳を傾けて、健全な業界が育成できるような入札・契約制度などに取り組んでいきたい」と述べた。
 防災対策については「最悪の事態を想定しながら、体制の準備、タイムラインなど準備をしていくことが大事。いざ何かが起こった時に、被害を最小化できるような努力をしていくことが大事」と述べた。
     ◇     
 齋藤博之(さいとう・ひろゆき)氏は、昭和42年9月生まれの57歳。北海道出身。
 平成5年に建設省採用後、近畿地方整備局豊岡河川国道事務所長、水管理・国土保全局治水課流域減災推進室長、水管理・国土保全局河川環境課河川保全企画室長、水管理・国土保全局海岸室長、広島県土木建築局長、国土技術政策総合研究所社会資本マネジメント研究センター長、総合政策局公共事業企画調整課長、水管理・国土保全局水資源部長を経て、7月1日付の人事異動で近畿地方整備局長に就任。