トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建通新聞社(静岡)
2025/07/25

【静岡】「トンネル施設点検の効率化・高度化」の取り組み

 「県土を守る=県民の安心・安全を守る」ためには、社会インフラの適切な管理が必要であることから、静岡県交通基盤部道路局道路保全課防災安全班では、2024年度から「トンネル施設点検の効率化・高度化」の取り組みを始めた。
 道路トンネル施設点検の効率化・高度化のために活用した新技術では、交通規制期間の短縮により、事故リスク低減・点検時の安全を確保するとともに、点検の効率化により、工期短縮やコスト縮減の効果が確認された。
 防災安全班の班長・松本純弥氏、技師・太田暁氏に、取り組み内容を聞いた。

――これまでのトンネル施設点検は。
 交通規制を実施しながら、点検者が高所作業車に乗り近接目視。打音検査で詳細を点検し、手書きで記録。ひび割れなどの状態をスケッチ、展開図も描き、写真撮影している。

――活用した新技術とは。また、活用の発端は。
 専用の計測車両を用いて、法定速度で走行しながらトンネル内部の画像データを取得するため、交通規制は不要となる。AIを活用して、ひび割れを自動検出する。同時に3次元点群データの取得ができ、点検結果の高度化とデジタルデータの蓄積が可能。
 24年3月、静岡県のトンネルガイドラインを改訂した際、トンネル点検に新技術を活用することを盛り込む。検討の結果、国等でも活用されている「走行型画像計測技術」の試験導入に至った。

――専用の計測車両・走行型高速3Dトンネル点検システム「走行型画像計測車両MIMM−R(ミーム・アール)」について。
 100万点毎秒の高密度レーザ、非接触空洞探査レーザを搭載。200万画素のビデオカメラ・全周18台が、0・3_以上のひび割れ・変状を連続撮影する。 

――24年度の実施概要。
 5年に1度の法定点検の周期により、24年度は伊豆半島の県管理トンネル28施設の点検に走行型画像計測技術を試行的に導入。
 伊豆半島はトンネルが密集しており、一括して点検することで効率性がさらに向上した。
 また、走行型画像計測技術の情報を共有するため、国土交通省・県内自治体・静岡県測量設計業協会を対象に、8月には国道136号下船原トンネル(伊豆市)で現場見学会も開いた。

――新技術活用の効果をどう評価しているか。
 @点検結果のデジタル化・高度化A現場作業の効率化・交通規制期間の短縮Bコストの縮減―の3点がある。

➀点検結果のデジタル化・高度化
AIでひび割れを自動検出し、さらに3次元点群データを組み合わせることで位置情報の付与が可能となる。その結果をもとに、高度なデジタル図面を作成。
 災害発生時のデータ活用=トンネル点検業務で取得した3次元点群データと、変状発生後の3次元点群データを比較することで、災害発生時においても、速やかにトンネル断面の変形などの異常を把握可能。

➁現場作業の効率化・交通規制期間の短縮
 24年度に新技術を活用した28トンネルでの効果を試算。交通規制を伴う現場作業日数は、31日間から9日間へと70%短縮した。
 従来、トンネル全体の点検作業(近接目視・打音検査・スケッチなど)に21日間、設計業務による現地調査に10日間を要していたが、走行型画像計測を活用した点検では、計測で抽出されたひび割れ箇所のみ交通規制を伴う詳細点検を行うため、9日間で実施することができる。

➂コストの縮減
点検作業時の交通誘導員について、現場作業の効率化・交通規制期間の短縮に伴い、コストが3分の1に抑えられた(24年度は28トンネルで実施)。
 また、点検作業と補修設計の合計費用を要していたが、新技術で取得した高度なデジタル図面を用いれば補修設計が一部省略できるため、コストを2割程度削減できた。

――25年度の実施について。
 24年度点検で抽出されたひび割れ箇所の詳細点検を実施し、走行型画像計測技術の成果(精度等)について検証を行う。また、伊豆半島の残りと中西部地域の30トンネル程度で、走行型画像計測技術を用いた点検を試行的に実施する予定。

――静岡県「ひとり1改革運動」2024年度年間最優秀賞事例(県民サービス向上部門)に選出された。
 表彰式での「DXの活用は大きな成果。引き続き、さまざまなトライをしてほしい」と知事から言葉をいただいた。今後も社会インフラの効率的な管理に向け、引き続きDXの取り組みを積極的に推進していく。

(提供:建通新聞社)