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建通新聞社(中部)
2025/07/30

【愛知】名古屋市内中小建設業 賃上げ実施企業6割超える

 名古屋市経済局が市内中小企業を対象に実施した調査で、過去1年間に賃上げを実施した建設企業が6割を超え、今後予定・検討している企業を含めると8割の建設業が賃上げ実施を行う見込みであることが分かった。産業別でみても、建設業は卸売業(賃上げ実施または予定・検討と回答が81・7%)に次いで賃上げに取り組む・取り組もうと考えている企業が多い。正社員確保のための取り組みをみても、建設業と卸売業は上位に「ハローワーク・人材紹介会社活用」と「給与・賞与等の引き上げ」が並んだ。他産業との競争の中、両業種が賃上げに取り組んでいることが分かる。ただ、コスト上昇分の価格転嫁ができたかどうかの設問で、「価格転嫁ができなかった」と回答した企業の割合も建設業が最も高く、賃上げを含めたコストをどのように反映していくのか、改善への取り組みが不可欠となっている。
 調査は、市が年2回実施している景況調査(2025年上期調査)の中で実施。調査では、過去1年間で賃上げしたと回答した建設企業の割合は62・7%。予定・検討している企業(17・3%)を合わせると、8割の企業が賃上げを実施または実施を検討している。他産業では、卸売業の賃上げ実施割合が68・8%と最も高く、建設業は2番目に高い割合となった。その他の産業の賃上げを実施したと回答した割合は、製造業が58・2%、サービス業が56・4%、小売業が39%。
 24年下期の調査では、建設業で賃上げを実施したと回答した企業の割合は53・9%だった。賃上げを実施する企業の割合は、拡大傾向にあるといえそうだ。同期調査では、製造業の賃上げ実施と回答した割合が53・9%、卸売業が56・5%。人材獲得が他産業との競争となる中、卸売業の賃上げの割合が上昇している点には注意が必要だろう。
 正社員を確保するための取り組みで、建設業は「ハローワーク・人材紹介会社活用」を挙げた企業が41・3%で最も多い。2番目は「給与・賞与等の引き上げ」の37・3%、3番目は「採用条件の緩和」「多様な人材の活躍推進(女性、高齢者、外国人等)が24%で同率だった。1番目と2番目は卸売業も同様(44・1%と35・5%)。ただ、製造業、卸売業、小売業は1番多かった回答が「特に実施しているものはない」(卸売業も3番目は同回答)。担い手を確保するため、建設業の魅力をさらに発信していく必要がありそうだ。
 コスト上昇分の価格転嫁について、建設業は「取り組んでいるが価格転嫁できなかった」の回答割合が3分の1超(36%)で、産業別でみると最も高い。他産業では、小売業(32・5%)とサービス業(29・2%)が高かった一方、製造業(19・3%)と卸売業(15・1%)は低い。賃上げや合理化・省力化投資を行っていくためには利益の確保が不可欠。同調査では、価格転嫁できなかった背景(元請、下請の別など)までは分からないが、業界内・外で改善に向けて取り組まなければ、他産業との競争でさらに不利になることは明白だ。
 調査は5月12日〜6月6日に実施。調査全体は市内中小企業2200事業所を無作為抽出。建設業は市内事業所のうち従業者数300人未満の220事業所。建設業の回収率は34・1%(全体は31・1%)。


提供:建通新聞社