近江八幡市は今年度、下水道耐震化対策実施計画を策定する。市内一円の管路施設について、重要度の評価および施設の耐震性についての評価を行い、地震時に下水道が最低限有すべき機能を確保するための施設の耐震化および被災した場合の下水道機能のバックアップ対策(減災対策)を併せて進めるための取り組み。下水道の地震に対する安全度を高め、安心した都市活動の継続を図る。
対象面積(下水道計画区域)は約1746f(汚水のみ)。対象施設は管路施設(マンホール浮上診断含む)、処理場(沖島浄化センター)。耐震診断調査(簡易診断)を経て、対象施設のうち、耐震診断調査(詳細診断)または耐震対策が必要な施設について▽耐震対策の必要性検討▽耐震対策工法の概略検討▽耐震対策の概算工事費算出▽耐震対策実施計画の作成―等の対策策定を行う。
耐震対策工法の検討では、想定される被害の内容、管路施設の変状および埋設条件等に応じて該当する対策工法を選定するとともに、経済性、施工性、他都市での採用実績等の面から評価を行い、最も合理的な方策を選定する。管路施設における緊急対策としては、流下機能を確保すること、緊急輸送路下の管理施設にあってはマンホール浮上や道路陥没といった交通障害を引き起こさない対策が必要となるため、適切な方法を選定する。対策例は▽管路施設=マンホールと管路との接合部における可とう性継手の設置/河川横断部、軌道下および緊急輸送路下等における耐震性を考慮した管更生/増補管路等の既存施設の活用や振り分けマンホールによるネットワーク化/他の地下埋設物工事も視野に入れた埋め戻し土の液状化対策/マンホール浮上対策▽処理場=流入渠から放流渠に至る池構造物の接続部における可とう性継手の設置/池構造物のエキスパンションジョイントの耐震化、耐震壁やブレースの設置/管理棟等建築物の耐震壁やブレースの設置(特に居住空間)/機械電気設備の水没を防止するための施設のブロック化/機械電気設備の可とう性継手の設置、構造物との一体化/被害の拡大防止のための緊急停止装置等―。
減災対策の検討では、地域防災計画等から現在の減災対策について確認し、新たに検討する必要があるものについて、その内容、実施方針について検討する。減災対策に係る事項は▽備蓄倉庫、耐震性貯水槽▽可搬式ポンプや仮配管等復旧資器材の調達方法の確保(民間および公共機関との協定等)▽被災時に調達できない復旧資器材の備蓄▽仮設トイレ資器材の調達(マンホールトイレシステムの建設を含む)▽その他ソフト対策(情報開示、支援体制の強化、災害訓練の実施、迅速な被災調査の実現)―。
対策優先順位の検討では、緊急的に対応すべき施設を対象に、予測される被害の大きさ、施設の重要度を総合的に考慮した、耐震対策および減災対策の優先順位を検討する。対策の優先順位は、公衆衛生の確保、浸水被害の防除、トイレ使用の確保、応急対策活動の確保といった下水道が最低限有すべき機能を考慮して定めることを基本とし、総合的に判断して判定する。原則とする項目は▽下水道施設において機能的に重要な管路および施設▽被害による二次災害の影響が特に大きい管路および施設▽布設年度の古い管路施設および常時より変状が生じている管路および施設▽地盤条件が悪く、かつ大規模な被害を受けやすい箇所に布設されている管路および建設されている施設―。
段階的整備計画の立案では、適正かつ効率的な整備計画を策定するため、地域防災計画等の上位計画、下水道施設の整備状況および被害予測結果等を勘案した上で、下水道耐震化実施計画の対象施設ならびに対象路線を選定する。下水道耐震化実施計画の対象施設については、地域防災計画等の上位計画の内容、地形・土質情報、過去の地震記録、道路・鉄道等の状況、防災拠点・避難所の状況ならびに下水道管路被害予測図等から、管路施設の地震対策を優先すべき地区(箇所)を選定し、その中で特に緊急に対応すべき施設について整理する。視点としては▽甚大な被害を生じるおそれのある管路および施設▽重要な防災拠点から排水を受ける管路▽被災時に重大な交通機能への障害を及ぼすおそれのある緊急輸送路等に埋設されている管路▽被災時に周辺へ二次災害を誘発するおそれのある軌道および河川を横断する管路▽計画・設計段階では想定し得ない特殊な環境条件によって管路施設の腐食等が顕著であり、また、既に管路施設の劣化・損傷に起因する道路陥没や不等沈下等が発生している管路および施設―。同計画で設定する目標については、短期間のうちに実現可能なものとし、地域や施設の重要性等を勘案した防災目標とする。また、これらの防災としての対策が十分整わない状況下で被災した場合にも下水道が最低限有すべき機能を確保するための暫定的な対策として減災目標も設定する。
中長期対策計画の立案では、緊急の目標に沿った下水道管路施設総合地震対策計画と併せて、中期目標および長期目標として段階的な防災対策および減災対策の考え方、概略的な規模を検討する。事業実施効果の検討では、個々の対策に対する効果を整理するとともに対策後の被害低減度等を検証し、公衆衛生の保全、浸水被害の防除、応急対策の確保、緊急時の輸送路の確保等防災対策および減災対策について検討する。下水道耐震化実施計画書の作成では、路線ごとの地震対策優先順位に基づき、緊急(概ね5ヵ年)に達成すべき耐震化対策に関する年次計画、概算事業費などを算出することで耐震化事業の実施計画を策定する。また、防災対策と併せて実施することが効果的な減災対策について検討し、事業実施計画に位置付ける。
管路施設の簡易診断(定性的評価)に加え、マンホール浮上計算も合わせて実施する。浮上計算の対象とするマンホールは、台帳データを用いて「重要な幹線等」に該当する全てのマンホールとする。ただし、施設建設年度等より耐震設計が行われていることが確認できる施設については、計算を省略する。
これら下水道耐震化対策検討業務の受託者は、9月11日開札の一般競争入札で選定する。委託期間は契約締結日から来年3月6日まで。
提供:滋賀産業新聞