知多土木研究会(花井宏基会長)と知多農業土木研究会(村瀬諭会長)は、「災害時におけるレンタル機材の提供に関する協定書」の合同調印式を、9月8日にレンタル機材会社と行った。同会らは、元旦に知多農林水産事務所管内で発生した高病原性鳥インフルエンザの防疫措置に奔走。その過程で直面した課題から、現状の防災協定の枠組みでは対応が困難と考え、新たな協定を締結することにした。防疫措置を行った同研究会と、協力要請に応じたレンタル機材会社に当時を振り返ってもらいながら、防疫対応の課題を探った。(名古屋支局=徳山貴史)
2025年1月1日の夜、愛知県常滑市で高病原性鳥インフルエンザの発症が確認された。知多管内で初めての発生。知多農業土木研究会へ一報が入り、幹部が対応を協議した。行政から最初の連絡を受けた小谷健児さん(花井組)は、「初動の伝達は、元旦にも関わらずスムーズだった。村瀬会長に連絡を入れて、当日の深夜には知多農林水産事務所で会長や第一陣の企業と打合せを行い、すぐに手配可能な人員と資機材の調整を行うことができた」と振り返る。
翌日、1月2日から常滑市内で殺処分が始まり、同研究会からは4社が対応。しかし、資機材の面で「重機や夜間作業に必要な照明灯、発電機はある程度確保はできたが、現地に運搬するトレーラーや燃料の確保が難しかった。新年早々の特殊な状況だった」と、最初の課題に直面する。
花井会長は、「レンタル機材会社の皆さんには、年始休暇にも関わらず、必要な資機材の提供や運搬などをしていただいた。われわれ研究会でヒトを確保できても、モノがなければ防疫対応はできない。今後、この地域に発生する災害に対して、民間企業同士の協定に大きな意味があると感じた」と話す。
次の課題は、発生箇所が拡大したことによる人手の問題。1例目の殺処分が完了した同日に2例目が発生し、その後も連続発生したことで長期戦に突入した。村瀬会長は、「初めて体験することなので、当初は手間取る場面もあったが、厳しい寒さに耐えながら初期の対応はできた。しかしながら、殺処分対応とは別に行う、移動制限区域と搬出制限区域での消毒ポイント設置では、人手が足りず、収束の兆しが見えない状況下で作業員の疲労も極限に達していた」と管内業者だけでは対応が追いつかなかった状況を説明する。
愛知県農業土木研究会名古屋支部や同岡崎支部らが加わるも、終わりが見えない戦いは続いた。1月1日の1例目から2月15日の13例目までの間、動員人員は、建設業者、愛知県職員、半田市・常滑市・阿久比町の職員、東海農政局、近畿農政局、自衛隊員ら延べ2万3064人。殺処分、掘削、埋却、清掃・消毒の対応にあたった。
結果として、全13例で発生した高病原性鳥インフルエンザにおける被害は、知多半島の養鶏羽の約半分にあたる186万7561羽にのぼった。実に45日間にわたる対応活動で、うち26日間は複数の農場で各社が対応することになった。必然的に管内建設業者の各社が施工中の工事を中断することになり、1日3交替制で対応。2月15日にようやく終息を迎える。(19日号へ続く)
提供:建通新聞社