さいたま市は12日に開催したまちづくり委員会で、現段階の「下水道施設における官民連携事業(ウォーターPPP基本計画案」を報告した。管理・更新一体マネジメント方式(レベル3・5)で、対象は北・大宮・中央区の管路施設とする方向で検討。本年度後半は第3回民間市場調査を行って実施方針や要求水準書の素案を提示し、26年度上半期をめどに実施方針・要求水準書案や入札説明書案などの議会報告を行う見通しだ。
将来的な課題解決や経営の持続性を確保する観点から、官民連携により下水道などのインフラ管理・更新を一体的に実施するウォーターPPP導入が効果的とみる。
現在は下水道事業全体で年間200件以上の個別発注を行っているが、民間活力を導入すれば職員の事務負担軽減や業務効率化、事務費削減が期待できる。現状と同様の要求水準を設定しつつ履行状況をモニタリングするため、少なくとも従来手法と同様の水準は確保できる考え。事業者から要求水準書以上の提案があればサービスが向上する可能性もある。
懸念としては地元企業の受注機会減少や民間事業者が参入する障壁の高さなどが考えられるが、地元企業に配慮した入札条件や業務範囲を設定するとともに、より多くの事業者が参入しやすい事業スキームを組み入札公告の競争性を確保することで対応を図る。
委員会に報告された基本計画案によれば、事業のレベルは管理・更新一体マネジメント方式(レベル3・5)を選択する方向となる。市場調査で多数の民間事業者が希望し、より早期に導入可能な方式だったことなどを理由とした。事業期間は10年間に設定する。
ウォーターPPPでは維持管理と更新を一体的に最適化する方式として「更新実施型」と「更新支援型」がある。更新実施型とした場合は更新を担う構成員の業種が増えて共同事業体を組成する難度が高くなるため、本事業では更新計画策定やコンストラクションマネジメントなどを採り入れる「更新支援型」を選択している。
対象業務は維持管理・修繕・更新計画案作成を含めるが、市民からの要望受付は混乱を避けるため市が継続する方向。
対象施設・エリアは全施設・全市域などを含んだ4案まで絞り込んでいたが、ウォーターPPP導入が市として初の事例となり影響が見通せない部分もあるため、総合的に評価して「北区・大宮区・中央区の管路施設のみ」とする案を最適とみている。
既存の従来手法と同等以上の水準とする仕様を指定した性能発注とするが、詳細調査や更新工事を実施した箇所などから状況を確認して性能指定に移行する方向で検討を進める。
各事業年度の収益が規定された基準を上回った場合、その程度に応じて運営賢者から管理者に金銭を支払う「プロフィットシェア」も導入する方向で検討していく。
特定役務に該当しないためWTOは適応されないものと捉える。受託者はJVを想定しており、地元企業の参画が想定される「修繕および維持管理業務を担う構成員」に関しては「市内業務実績があり市内本店の事業者を含めること」を資格要件とする方向だ。
想定する構成員は▽統括管理業務=大手事業者など▽更新計画案作成=設計事業者▽管路施設修繕=建設事業者(地元企業)▽管路施設維持管理業務=維持管理事業者(地元企業)――。再委託先による地元企業の参入機会確保も検討する。
概算事業費は現段階では約73億円(税込)としているが、国の動向などにより変動する可能性がある。
順調に進んだ場合は第3回民間市場調査を年度内に行い。26年度上半期をめどに実施方針案などの議会報告、実施方針および要求水準書案の公表などに入る。26年度上半期にも債務負担行為設定の議会議決を経て入札を公告。契約締結は27年度下半期を目標に据える。
9月補正予算案では、事業者の公募や選定などの準備へ限度額4178万9000円の債務負担行為を設定している。
提供:埼玉建設新聞