トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

日本工業経済新聞社(群馬)
2025/09/18

【群馬】ウォーターPPP導入 22市町村が検討中

弊紙は県内35市町村に対し、上水道・下水道のウォーターPPP導入について独自にアンケート調査を行った。「導入する」を選択した市町村はなく「導入に向け検討中」または「導入の有無も含め検討中」と回答した市町村が合わせて22市町村あり、残る13市町村は「導入しない」と答えた。導入の課題として◇自らの自治体と同規模程度の自治体における導入事例がほぼ無い◇どのように進めていけば良いか不透明な部分が多い◇民間事業者が参入してくれるか不安――といった意見が多く挙がった。
国は上水道、工業用水道、下水道について、PPP/PFI推進アクションプラン期間の2022年度〜31年度の10年間で公共施設等管理運営事業(コンセッション方式)に段階的に移行するため、官民連携方式(管理・更新一体マネジメント方式)もウォーターPPPに位置付け、導入拡大を促進している。また、汚水管の改築に伴う国費支援に関して、緊急輸送道路等の下に埋設されている汚水管の耐震化を除き、ウォーターPPP導入を決定済みであることを27年度以降に要件化することを示している。
管理・更新一体マネジメント方式には、維持管理と更新を一体的に最適化するための方式として維持管理と更新を一体的に実施する「更新実施型」と更新計画案の策定やコンストラクションマネジメント(CM)により地方公共団体の更新を支援する「更新支援型」がある。
「更新実施型」の特徴には更新工事を含めて一括で民間に委ねることができ、地方公共団体の体制補完効果が大きいことを挙げている。一方の「更新支援型」に関しては発注に関係する技術力を地方公共団体に残すもの。また、実際に維持管理を実施する民間企業等の観点から、より効果的な更新計画案の作成が期待できるとしている。
アンケートの結果を見ると、「導入する」と回答した市町村はなく「導入に向け検討中」を選択したのは◇前橋市◇高崎市◇桐生市◇太田市◇沼田市◇館林市◇渋川市◇富岡市◇みどり市◇吉岡町◇東吾妻町◇片品村◇川場村◇みなかみ町◇板倉町◇明和町◇千代田町◇大泉町◇邑楽町−の19市町村。この中で下水道のみで導入を検討しているのは◇前橋市◇高崎市◇桐生市◇太田市◇館林市◇渋川市◇富岡市◇吉岡町◇片品村◇川場村◇みなかみ町◇板倉町◇明和町◇千代田町◇大泉町◇邑楽町−の16市町村となる。
残る3市町は沼田市とみどり市、東吾妻町。沼田市は上下一体で導入を検討。みどり市については簡易水道(東町地域)および下水道を対象に検討を進める。東吾妻町は上水道、下水道それぞれで検討中。下水道においては25年度に導入可能性調査業務をオウギ工設(前橋市)に委託している。なお、上水道のみで導入を検討している市町村はなかった。
「導入に向け検討中」と回答した市町村が検討している導入方式は◇前橋市◇高崎市◇桐生市◇太田市◇沼田市◇渋川市◇富岡市◇吉岡町◇片品村◇川場村−の10市町村が管理・更新一体マネジメント方式で、この中で片品村が更新実施型、高崎市と川場村は更新支援型を検討中。前橋市のほか◇桐生市◇太田市◇沼田市◇渋川市◇富岡市◇吉岡町−の7市町は導入方式を今後検討し決定(未定を含む)すると回答した。コンセッション方式を検討している市町村はなかった。未定(検討中を含む)と回答したのは◇館林市◇みどり市◇東吾妻町◇みなかみ町◇板倉町◇明和町◇千代田町◇大泉町◇邑楽町−9市町だった。
導入に向けたスケジュールを示したのは◇前橋市◇桐生市◇沼田市◇館林市◇片品村◇みなかみ町−の6市町村で◇前橋市=27年度に入札・公募を開始予定◇桐生市=26年度に実施方針、要求水準書、募集要項等を作成し、27年度の契約を目指す◇沼田市=26年度に基礎調査を委託し、28年度の導入を目指す◇館林市=25年度に行う導入可能性調査が順調に進めば、26年度に公募等を行い、27年度の契約を目指す◇片品村=27年度に基礎調査の委託を予定。29年度の導入を目指す◇みなかみ町=26年度に基礎調査を委託する予定。28年度の導入を目指す−としている。
高崎市では導入可能性調査を実施中。太田市や、みどり市においてはこれから内部で導入に向けた協議を予定する。渋川市は他事業体の進捗状況や先行事例などの調査研究を進めているところ。吉岡町は資料収集等を行っている段階。川場村については内部で導入に向けた協議を進めているところ。邑楽町においては25年度に導入可能性調査を委託。調査結果や民間事業者の意見などを踏まえ詳細を決めるとしている。
「導入の有無も含め検討中」と回答したのは◇伊勢崎市◇安中市◇高山村−。伊勢崎市は上水道、下水道でそれぞれウォーターPPP導入の有無も含め検討中としている。安中市については管理・更新一体マネジメント方式による上下一体での導入可能性に向け検討中。
「導入しない」を選択したのは◇藤岡市◇榛東村◇上野村◇神流町◇下仁田町◇南牧村◇甘楽町◇中之条町◇長野原町◇嬬恋村◇草津町◇昭和村◇玉村町−の13市町村。導入しない理由に◇小規模な自治体ではウォーターPPPの要件を満たすだけでもハードルが高い中、管渠の更新工事を計画的に進められるかも課題◇職員数の不足◇制度に関する知識が浅い◇上下水道事業ともに直営で継続していきたい−などが挙がった。このほか、ウォーターPPPのあり方を市町村および県も含め、課題の共有や連携による解決策など検討していく必要があるといった意見もあった。また、県や流域下水道県央処理区の関連市町村と協議しながら広域型ウォーターPPPの導入も含めて今後検討していく予定といった回答や導入しないことを決めたわけではなく、今後の事業運営において必要性や有効性を検討すべき課題との認識を示す市町村もあった。
ウォーターPPP導入に関して◇知識・ノウハウの不足◇職員数の不足により導入へ人手が足りていない◇導入に向けた必要な調査の委託内容や金額などの目安が不透明◇不測の事態へのリスク分担の設定が難しい−といった課題が浮き彫りとなった。このほか◇広域化や施設の統廃合を検討する際に、PPPの契約期間である10年間との衝突が懸念される◇これまで携わってきた地元企業参画の機会確保のため、大手企業と地元企業とのマッチングができる場の創出が必要−などの意見も挙がった。