実効性の高い京町家保全・継承の施策の在り方について検討を進めてきた京都市京町家保全・継承審議会(会長・田光雄京都美術工芸大学副学長)の答申案が24日、明らかになった。
10月上旬に市長に答申した後、京町家保全・継承推進計画の改定案をまとめ、令和8年2月頃にパブリックコメントを行い、3月に計画を改定する予定。
答申案「京町家の保全・継承に係る施策の点検・検証結果とより実効性の高い施策の在り方について」では、現存する京町家を京町家としての状態と所有者の保全意識との2軸で4つのグループ(@京町家としての状態が良好であり、所有者の保全意識も高いものA京町家としての状態が良好であるものの、所有者の保全意識は高くないものB京町家としての状態は良好ではないものの、所有者の保全意識は高いものC京町家としての状態が良好ではなく、所有者の保全意識も高くないもの)に分類した上で、それぞれのグループごとに必要な施策を展開することが望ましいとした。
グループ@は「所有者への手厚い支援や景観重要建造物の積極的な指定等により最優先で保全の対象とすべき」、グループAは「所有者の保全意識を高め、グループ@に誘導することを目指すべき」、グループBは「建物の改修工事の促進により京町家としての価値向上や機能向上を積極的に誘導し、グループ@を目指すべき」、グループCは「所有者による自主的な保全・継承を後押しする施策を行っていくべき」とした。
京町家条例に基づく指定を受けた京町家を対象として解体の1年前の届出を義務付けているが、現行制度だけでは京町家の減少に歯止めがかからないとし、グループ@については、京町家の解体に係る規制強化を検討すべきとした。一方で、規制は財産権を制限することにもつながりかねず、実現は容易ではないとして、まずは、景観法による景観重要建造物の指定制度など、現行の法体系で活用できる仕組みを最大限活用し、京町家の解体を制限すべきとした。
また所有者の経済的負担の軽減として、固定資産税・相続税の負担軽減、日常的な維持管理に要する費用の負担軽減につながる施策を新たに実施すべきとした。
グループAについては、京町家の保全・継承に前向きな関係者(行政やNPO法人、公益財団法人等の公益的な法人)が積極的に所有していく「社会的保有」の仕組みを構築すべきとした。
また市が試行実施している京町家賃貸モデル事業のように、京都市や京都市景観・まちづくりセンターなどの公的機関が積極的に関与しながら、これまで市場に流通していなかった未利用の京町家を公的機関が借り上げてサブリースし、適切に活用していく仕組みも積極的に展開していくべきとした。
グループ@ABについて、改修工事に対する支援では、過去の改修により、京町家の魅力が失われているものについて、復原的改修により京町家の魅力を取り戻そうとする工事は、町並み景観の基盤である京町家の保全・継承の観点で高い効果が期待できるとし、補助等により積極的に推進していくべきとした。
このほか、新たな施策として、京町家を活用した公的な複合施設の整備が望まれるとした。
また行政だけでは実現が難しい「京町家に係る調査研究機能の充実」「組織特性を生かした京町家の活用・流通への積極的な関与」について、市の重要な政策パートナーである京都市景観・まちづくりセンターの機能強化を挙げた。