小鹿野町は、廃校が相次ぐ学校施設の利活用方法の検討を進めている。近年、人口の減少率が10%強で推移し、近隣市町のなかで最も高い現状があるため、廃校の利活用を活性化の起爆剤にする狙いがある。これまで廃校した4校について、事業者からの具体的な提案を受け付ける時期などを示した利活用方針を公表。同町は、住民らの反応を踏まえて方針を精査し、近くアイデアの公募に乗り出す見込みだ。
同町によると、全国で年間約500校が廃校となっており、公立学校だけで合計7612校(2023年度)。同町でも25年3月末に、三田川小、長若小、両神小が廃校になった。そうした背景から廃校施設の利活用は年々、競争が激化しているという。
同町が、「目玉となる施設」(同町移住定住推進室)と位置付けるのが、25年3月に廃校したばかりの旧長若小だ。
同小では、校舎や校庭、体育館を一体的に貸し出す方針。「使われていた状態であるため、再活用がしやすい環境にある」(同室)という。そうした「鮮度の高さ」(同室)が事業者側からの提案を受けやすい。
現状、電気や水道料など年間約230万円の維持管理費を町が負担している。同町では、空き公共施設として町財政を圧迫するのではなく、適切に利用され、財政健全化の一助となることを期待する施設として、10月上旬から事業者からの提案を受け付ける予定だ。
その後、選定委員会による審査や、住民説明会などを経て、26年3月末には本契約にこぎ着けたい考え。
また、15年度末に廃校した旧両神中学では、校庭が未利用のままだ。校舎は文化財収蔵庫や、同町の備品類倉庫として活用。体育館も定期的にスポーツ団体などの利用があるという。
このまま放置すれば、校庭全面の管理が行き届かず荒廃し、利活用競争に遅れてしまい、廃止施設となる恐れがあるとして、10月上旬にも公募を始めたい考えだ。
同町では、日本百名山の一つ、両神山など山岳資源を豊富に持ち、観光拠点を多く持つ両神地域の活性化のため、地域経済や振興に役立つ提案を広く公募していく方針。製造業の拠点として利用したり、会社の事業などで活用することなどを想定する。
公募については、旧長若小と同様のスケジュールを計画する。
さらに、15年度末に廃校となった旧三田川中学では、校舎の利活用を模索している。現在、テレビCMや映画の撮影などで随時、活用されている。一定の歳入もあるが、年間約100万円の維持管理費がかかるなどし、収支はマイナスになっているのが現状。
他の閉校学校の開放が進んでいるため、年々、撮影などへの利用率は減少している。
ただ、毎年8月に開かれる恒例の花火大会では、校舎屋上からの眺めが人気で、町商工会などから利用を継続したい意向が寄せられている。
同町では、そうしたニーズを共存できる活用法の有無を確認しながら、今後、利用者を公募する可能性も模索する。
一方、活用法が大きく揺れているのが、15年度末に閉校した旧長若中学。校庭部分を宅地造成して約10戸に分譲する案を23年3月に町側が公表した。だが、地域住民らが反対する声が強くあり、いったん事業は休止した。
今回、改めて、旧長若中エリアのまちづくりビジョンのイメージ図などをまとめて提案したうえで、住民らから改めて意見を募っている。
提供:埼玉建設新聞