一般社団法人全国中小建設業協会(全中建 河崎茂会長)のブロック別意見交換会〈近畿ブロック〉が6日、福井市手寄1丁目のアオッサで開催された。賃金アップや週休2日制など、働き方改革に向けた環境整備について話し合った。国土交通省の本省と近畿地方整備局、福井県と福井市の担当官7人を招き、福井地区建設業会12人、全中建京都5人、大阪府中小建設業協会4人、全中建5人の役員らが参加した。
全中建の川崎会長が主催者挨拶。今年で13年目を迎える意見交換で「地域の実情や問題点など直面する課題解決へ向ける目的で継続。設計労務単価が13年連続し引き上げられるなど、経営環境の改善に向かっている」と意義を強調。一方で「安定経営が見込めない企業も多数存在。先を見通せる予算確保があれば、経営の安定化も可能」と、さらなる支援を求めた。山本厚福井地区建設業会会長も歓迎の挨拶をした。出席者は国土交通省の不動産・建設経済局建設業課の高橋信博入札制度企画指導室長、的野祥一調整係長。近畿地方整備局の松本光一郎企画部技術管理課建設専門官、小山祐建政部建設産業第一課長、川勝康弘営繕部技術・評価課長。福井県の小林寿一土木部土木管理課長。福井市の伊藤一味財政部契約課長。
隣県へ入札参加
福井地区から提案し、「例えば隣県の石川県は、北陸地方整備局管轄のため、参加可能な案件であっても実績がなく参加ができない。工事量が多い地域で、不調になった工事については、(待ちの姿勢ではなく)隣接県からも参加が可能なよう、入札制度など環境整備に向け、工事量の平準化を」などと求めた。
これに対し国側は、災害復旧のガイドラインのように、平時の工事の平準化の観点で前向きに回答。震災の影響から、発注量が多い状況にあるが、業者が追い付かない状況に鑑みて要望した。
今後も、安定した雇用と労働が必要となり、維持するには安定的な業務の受注が必要としている。
ICT化と安全の拡充も
意見交換では、福井地区建設業会から、働き方改革に向け、i−Constructionの有効性に理解を示した。しかし「最新機種は非常に高価であり、意義は理解しつつも導入しづらい状況。中小企業に積極的に助成の拡大を」と求めた。これに対し国側は「ICT化へ補助メニューを用意するなど、今後も共同歩調で」と理解促進を求めた。安全対策も(企業努力はもちろん)、安全費の確保充実に向け、小規模工事ついても強く要望した。夏季期間の単価補正で▽補正係数の段階化や歩掛の見直し▽労務単価(夏季補正)の設定▽サマータイムや夜間工事の推奨について、国と県、福井市においても拡充へ前向きに回答。調査基準価格(一般管理費の率)の引き上げは、財務当局の理解を得ながら進めていく等々と応じた。
高橋信博国交省不動産・建設経済局建設業課、入札制度企画指導室長が講演し、建設業行政の課題について話し、地域の入札制度の拡充へテコ入れが必要と意欲を示した。この中で、公共工事の設計労務単価は13年連続上げていると強調。ただし他産業(全産業)との比較では依然、年収で約80万円ほどの差があると努力目標を示した。このほか、ダンビング対策の低入札価格調査基準の計算式の改定や、円滑な価格転嫁の推進(スライド条項の運用基準の策定)、入札改善110番(入札契約制度における地方公共団体への指導強化)、熱中症対策(猛暑日を考慮した工期設定など)。独自の歩掛アンケート結果では、約半数の団体で設定。現場実態との乖離を指摘する状況を説明した。
山本厚福井地区建設業会会長は、地域の中小建設業の現況について話した。直轄の大型事業が4年後(令和11年度)に完成予定。ちなみに今年度の県内の直轄事業費は全体で429億円。このうち中部縦貫自動車道が210億円、足羽川ダムが175億円で、差し引き40億円ほどしかなく、それ以降がとても不安(死活問題)。今夏の福井市は、猛暑日が37日、真夏日が93日だった。近畿地整管内でも福井は雪国のため、12月中旬から2月中旬までは仕事に支障を来たす状況(約2カ月間は効率が上がらない)。4、5月の年度変わりで発注量が少ないなど。地域によって事情が変わっている。地域に合わせたシステム(積算、歩掛など)の構築をお願いしたい。
大阪は左官業が少ない
全中建京都は、労務費の引き上げを要望。大阪府中小建設業協会二十日会は、専門工事業者(特に左官業)の減少。同協会豊中建設業会は、工事の平準化と夏季の熱中症対策。同協会さつき会は、夏場の歩掛りの見直しと、地元業者育成を求めた。
国側としては、労務費について「行き渡ることが大切」と強調。受注機会の拡大に向け、地域の守り手として重要な役割を再確認した。