日本銀行横浜支店は、9月の神奈川県分の企業短期経済観測調査(短観)をまとめ、県内建設業の最近の景況感を示す業況判断(DI)はプラス41だった。調査開始以来最高だった前回6月調査からは6ポイント悪化したが、景況感としては好調を維持。同時期に発表した神奈川産業振興センター(KIP)の中小企業景気動向調査によると、7―9月期の建設業の業況判断はプラス4・1。4―6月期のプラスマイナスゼロから改善し、全6業種でプラス圏は最も良かった。ただ、雇用状況DIはマイナス44・5と前回調査同様に6業種の中で最も悪く、深刻な人手不足が続いている。
日銀短観、KIPの調査とも、数値は「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いたDI値で示す。
日銀短観の全11産業を合わせた現況DIはプラス19。建設業のプラス41は全産業で最も高かった。先行きを示すDIはプラス29と前回調査から11ポイント改善し、工事の堅調な受注状況がうかがえる。小野寺拓支店長は、「人手不足による受注機会の喪失や、人件費、資材価格上昇による利益率の低下の声もある」と、建設業の課題も指摘する。日銀短観の神奈川県分の回答企業は285社(製造業122社、非製造業161社、業種別の内訳は非公表)。
人手不足、猛暑、コスト増で先行き懸念
KIPの実施した7―9月期の中小企業景気動向調査によると、全6業種の業況DIの平均はマイナス25・1。比較的規模の大きい企業を調査対象とする日銀短観より悪い数値を示す傾向があり、プラス圏だったのは建設業のみ。中小建設企業でも建設業の景況感は堅調だ。
建設業の項目別のDIを見ると、売上はプラス2・5ポイント(4―6月期はマイナス10・3)、採算はマイナス0・8ポイント(同マイナス19)、単価は29・4ポイント(同11・2)。公共工事の発注が少ない4−6月期から景況感は改善している。
一方、雇用状況はマイナス44・5と、横ばいの数値が続き、厳しい状況が続く。全業種の平均はマイナス28・3。前期利益水準は7・6で、プラス圏ではあるものの前期の27・6から悪化した。
建設業者の回答からは「猛暑で工事の遅れが心配」「現場管理者の不足で受注できない時がある」「公共事業は堅調だが、全てのコストが増加し、先が見通せない」「設備投資が決まっても足踏みする顧客が多い」などの声があった。
KIPの調査対象は924社で、このうち建設業は121社。
提供:建通新聞社