さいたま市は地下鉄7号線延伸と連動する「岩槻駅周辺まちづくり」の方針検討を深める。同路線の延伸は新設予定の埼玉スタジアム駅(臨時駅)・中間駅を経て最終的に岩槻駅まで至る計画となっており、終点に当たる岩槻駅周辺のまちづくり方針を練る必要がある。年度内をめどにまちづくりビジョン案を打ち出す考えだ。
まちづくりビジョンを具体化するため、これまでに第1回(7月)・第2回(9月)、第3回(10月3日)の有識者会議を開催している。岩槻駅周辺の現状と課題を整理して、取り組むべき施策の方向性とまちの将来像を示すことが目的だ。
第3回会議までで、今後推進する施策として@まちの玄関口としての駅前空間充実A駅周辺部の土地・空間の有効活用による賑わい創出B交通網充実による地区内外の連携強化C観光・産業振興の充実と歩行者のウォーカブルD市民参加とエリアマネジメント推進――の5つの施策を打ち出す方向が示されている。
具体的な取組をみていくと、岩槻駅前の空間を充実させるための試みとしては、駅利用者をまちまで誘導するための方策が必要とみる。歩行者が滞留しやすくなる空間創出や賑わう場所の増設、観光スポットなどへの導線整理などを推進する。
地下鉄7号線延伸が実現に至れば駅周辺の土地需要にも変化が予想される。まちづくりビジョンでは需要の変化を受け入れる視点だけでなく、マイナス方向として想定する「歩行者がおらず車と駐車場だけがある駅前」「集合住宅やチェーン店ばかりが増える駅前」といった未来を防ぐための視点にも重きを置く。
駅周辺部の土地・空間活用に関しては、地権者や事業者との合意形成を前提とした基盤施設の改善・土地の高度利用などを視野に入れる。若年世代や子育て世帯に必要な機能の確保・充実と、駅と観光スポット間の魅力向上、駐車場需要への対応なども検討課題だ。
地下鉄7号線の岩槻駅が開設に至った暁には鉄道・バス・タクシー・自転車・歩行者などの交通網を充実させ、地区内外の連携強化を図る方針。ハード面ではゾーン30やハンプなどの整備、路側帯拡幅やカラー舗装による歩行空間の確保、交通規制やバリアフリー整備などの必要性検討を促進していく。
地域の観光・産業振興に当たっては、市内外から人が訪れたくなる魅力を発信するため歩行者のウォーカブル化や快適な道路空間の整備を重要視する。さらに空き店舗のリノベーション、公共空間の賑わい活用も視野に入る。
また、地域住民が主体的にまちづくりへ携われるようエリアマネジメントの展開を狙う。まちづくりプラットフォームを構築して、地域団体・民間事業者・地域企業・行政・教育機関・地域住民などが連携して賑わいを創出できる体制をイメージしている。
■まちの将来像も具体化させる
3日に開催した第3回有識者会議では、これらの施策を通じて実現するまちの将来像に関する議論が交わされた。
通勤・通学で鉄道利用する住民や駅利用者に対しては、快適な生活機能を持ちつつ、地域の歴史を感じて愛着を持てるようなまちを目指す。地下鉄7号線の延伸により都心部や大宮方面へのアクセス性が向上し、駅の周辺には若者・子育て世代を受け入れる住環境や便益施設を配置。通勤・通学時に自転車や徒歩で駅まで安全にたどり着く交通網を確保する考えだ。
市内外から訪れる来街者の目線では、旧城下町のエリアに魅力的な歴史的建造物や店舗があると認識され、観光スポットに迷わずアクセスできるまちを志す。駅にはまちの顔にふさわしい景観を整備し、来街者を駅前から旧城下町に誘導するなどの試みを打ち出す。
有識者会議での意見を踏まえつつ最終的なビジョンをまとめ、地下鉄7号線延伸線の開業までにそれぞれの取り組みを進めていく方針だ。
地下鉄7号線延伸の実現に向けては、現在も複数の検討が進行中。鉄道事業者への「事業実施要請」を行うことが当面の目標となっている。
提供:埼玉建設新聞