国土交通省近畿地方整備局は10月24日、地域の創意工夫を生かした水道事業や下水道事業に取り組む近畿7市町の首長との意見交換会を開き、上下水道行政の最近の動向や今後の上下水道事業について課題などを共有し、意見を交わした。
議事に先立ちあいさつに立った齋藤博之局長は、京都市内の国道1号で発生した漏水事故などについて触れ、「上下水道管の老朽化対策の強化やリダンダンシーの確保について、事業者への支援を進めていくことが必要と考えている」との考えを示した。続いて国土交通省大臣官房の石井宏幸上下水道審議官は、「老朽管に起因する大規模な陥没事故などがあったことで上下水道の安全、安心に関する国民の懸念が高まっている」と警鐘を鳴らし、「上下水道事業者の取り組みを支援できるよう、必要な予算の確保に全力で取り組む」とあいさつした。
意見交換では、@持続的な事業運営・経営基盤の強化A老朽化対策BDX技術の推進(導入)状況―の三つをテーマに設定した。
■自治体「収入減続くも物価高騰で歳出かさむ」
「持続的な事業運営・経営基盤の強化」については、自治体側から「人口減少や節水などから収入減が続いている。その一方で物価高騰やメンテナンスなどに歳出がかさむ」といった厳しい経営環境を訴える声があった。また、「広域化やウォーターPPPは、費用面の課題解決だけでなく、経営・災害対応などの安定化にもつながると考える」といった意見が出され、これに対し国交省は「広域かつ上下水で、質の高い民間の参加意欲が高まるような条件とすること大切だ。また、下水道の広域化については今後も議論を続けていきたい」と述べた。
■国交省「料金負担と国費補助のバランス考える必要」
「老朽化対策」については、「老朽管が急激に増え、処理施設の改修の必要も出てくる」との現状を自治体側が説明した。また、「地理条件の悪い地域では今後ますます収益が厳しくなる。上下水道の料金収入だけで維持していくことが難しくなる」として、「上下水道もインフラとして国の十分な支援が必要」と訴えた。国交省側は、「料金負担と補助(国費)のバランスを考えていく必要がある。事業体の視点でのヒントを情報提供してほしい」と応じた。
「DX技術の推進」では、DX導入による工事例について情報を共有した。
同会議には福井市、滋賀県近江八幡市、京都府綾部市、大阪狭山市、兵庫県明石市、奈良県橿原市、和歌山県みなべ町の各首長が参加した。参加者は未定だが、今後、同様の意見交換を隔年ペースで行う見込みだ。
※写真は建通新聞電子版に掲載中
提供:建通新聞社