能代市環境衛生課は「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け今年度、「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を策定した。水素エネルギーや木質バイオマス発電など再生可能エネルギーの活用や照明LED化など、省エネ転換を市、事業者、市民が一体で取り組む。水素の利活用では、能代ロケット実験場に設置する高圧水素設備の実施設計を来年度に委託し、9年度の着工を目指す。照明LED化は各課で実施計画をまとめ、8年度以降に進める。
地球温暖化対策実行計画は、具体的な温暖化対策を推進することを目的に策定。計画期間は7年度〜12年度(2030年)で、目標を2030年度までにCО2排出量を平成25年度比で56%削減、2050年度までに排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするとしている。再生可能エネルギーの導入量は今年3月時点で240,001kW。県内の一般的な世帯の年間電力使用量に換算すると、約97,000世帯分に相当する。
再エネは今後、水素や木質バイオマス、太陽光といったエネルギーの導入を見込み、CО2の削減に繋げる。水素の活用は総合政策課が水素ラボ構想を掲げ、能代ロケット実験場を有するJAXA(宇宙航空研究開発機構)や秋田大学、早稲田大学らと共同で取り組みを進めている。
構想は大きく2つに分類。構想1の実験場内にある液体水素貯蔵タンクから発生するボイルオフガスの回収・再利用については今年度、基本設計に当たる高圧水素設備の仕様や設置場所といった概要をまとめるため、一般財団法人エネルギー総合工学研究所に業務を委託している。実験場内に水素関連の開発・実証を行うラボを建設する構想2では、地域活性化を行う企業人のサポートも受けながら官民一体による実現を目指すため、整備手法などの検討を進める。
木質バイオマス発電については、中国木材株式会社が9年1月の稼働を予定している発電所の電力を能代工業団地内で活用する計画があり、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく「地域資源バイオマス発電設備」の認定に向け動き始めている。
今年8月に立ち上げた「林業・再生可能エネルギー共生協議会」では、今月20日に開催した第2回協議会で発電設備活用の基本計画素案を提示。意見を踏まえ、11月または12月の第3回協議会で修正した計画案を協議し、年内に成案化する。基本計画では、発電に利用する木質燃料について米代川流域など地域内のものを8割以上とする方針。策定後は、中国木材が策定する発電設備整備計画を市が認定することで、「地域資源バイオマス発電設備」として出力制御の対象外となり、安定的な電力供給に繋げる。
このほか、能代山本広域市町村圏組合が建設中のごみ処理施設「能代山本クリーンセンター」において、ごみ処理で発生する熱を利用した融雪などの取り組みも想定している。
市の既存施設では照明LED化のほか、電力の使用規模が大きい調理場3施設(南部、北部、二ツ井共同調理場)への太陽光発電導入も検討。可能性を調査した結果、最も電力を賄える夏場において調理場が稼働しないことから効率の面で課題があったため、今後は新しい技術なども見据えた再エネの導入を検討する。
市民に向けては11月14日に地球温暖化に関する講演会を開催。気候変動を受けて国家存亡の危機に瀕しているキリバス共和国をテーマにし、CО2削減に向けて可能な取り組みを考える機会を設ける。
提供:秋田建設工業新聞社