国や静岡県、市町、関係団体で構成するふじのくにi―Construction推進支援協議会は10月15日、静岡市葵区内で2025年度1回目の会合を開き、国土交通省と地元建設企業の両方の視点からのi―construction2・0(i―con2・0)の取り組みの発表や意見交換を行った。オンライン併用で、合計約50人が参加した。
i―con2・0では、40年度までに建設現場のオートメーション化を目指す。省人化の観点で、建設現場で少なくとも省人化3割、生産性1・5倍を目標とする。死亡事故削減など安全確保、屋外作業のリモート化、オフサイト化などの働き方改革、新3Kも推進する。
会長を務める静岡県交通基盤部建設政策課未来まちづくり室の平井武志室長は「昨今の建設産業で一番の課題は担い手不足。建設業を魅力ある、もうかる、面白い産業にするためにi―constructionの取り組みは重要な要素だ」と指摘。一方、「施工、データ連係、施工管理のオートメーション化が、県や市町の発注工事でどこまで実現できるかは未知数な部分があるが、何ができるかを見つけ出していきたい」と述べた。
国土交通省大臣官房参事官(イノベーション)グループの阿久根祐之課長補佐が、i―con2・0推進の背景や意義を説明。「作業を効率化するICT施工に対し、i―con2・0では施工データを活用することで現場全体のボトルネックを把握し、(施工)計画を見直すことができる」と説明した。
質疑応答で、静岡県土木施工管理技士会の松浦真明副会長は「省人化、効率化は建設業界にとって重要だが、どちらかというと大手企業が行うものというのが個人的な理解。静岡県内の建設業協会の会員は中小企業が多く、重機などに投資するハードルが高い。3次元データのためのソフトを購入することも難しい中で、大手企業と中小企業の技術格差の拡大という問題が生じると考えるが、中小企業に対するi―con2・0の位置付けは」と質問。阿久根氏は「自動施工となると、やはり大手企業でないと難しい部分はあると思う。基準などを作ることで、将来的に中小企業にも普及拡大を目指している」とした。
鈴与建設(静岡市清水区)土木施工本部DX推進課の實石彩世氏は、自身の経験を通じて感じたi―con2・0の課題を解説。
建設機械自動化の課題として、3次元設計データを作成して建設機械に読み込ませるだけでは自動化はできないことを挙げた。沿岸部や上部に構造物がある道路建設工事では自動化に必要なGNSSの受信状況に左右されることから「全ての現場でICT施工ができるわけではない。トータルステーションの追加が必要な追尾型の建機の使用やスターリンクなどの設備が必要になり、i―con2・0へ大きな障壁になる」と指摘した。
BIM/CIMについてデータ作成者として感じるメリットに、計画の精度が向上し施工の効率化とコスト削減が期待できること、3次元化することで情報共有がしやすいこと、潜在的なリスクを事前に評価し適切な対策を講じることができることを挙げた。
一方、データ作成に技術と専門知識が必要で人材育成に時間が掛かり、現場を見ながらの習得は困難が伴うのではないかという懸念を示した。また、データの互換性にも課題があるという。
デメリットを減らすために、CIMの作成は施工の生産性、安全性、品質の向上につながる部分に限定して作成し、納品データは点群データへの属性付与で対応することが良いのではないかと話した。
(提供・建通新聞社)