JR東海は10月29日、リニア中央新幹線の品川〜名古屋間の総工事費が11兆円となる見通しを示した。2023年12月の工事実施計画で示していた7兆0400億円から、約4兆円の増額。物価高と難工事への対応、仕様の深度化によるものとしている。
増額となった4兆円のうち、物価高への対応は2兆3000億円。このうち1兆3000億円は、資材や材料価格、建設発生土の受け入れに係る費用の他、労務費の上昇を反映した。残り1兆円に関しては、今後の工事費の上昇に備えて計上したもよう。
難工事への対応には、1兆2000億円の増額を試算した。山岳トンネルの掘削で当初の想定よりも脆(もろ)い地山が出現したことへの対応=図=や、高架橋・橋梁整備における追加調査、名古屋駅での軟弱地盤の変異抑制対策、品川駅舎の構造見直しなどを理由に挙げている。
また、仕様の深度化には4000億円を充てた。この増額は機械・電気設備の仕様変更と、シールドトンネルの下部構造の見直しによるもの。シールドトンネルの構造見直しに関しては、高架橋・橋梁の地震時の設計で得られたノウハウを基に再設計した結果、コンクリートや鉄筋などの数量が増加したためとしている。
JR東海は今回の増額について、約2兆4000億円の資金調達を行えれば工事資金の確保と「健全経営と安定配当を堅持」できるとした。前提条件として開業時期を2035年に設定しているものの、これは「試算のために便宜上仮置きしたもの」と強調。静岡工区のトンネル掘削工事に着手の見通しが立っていないため、開業時期の見通しを示すことはできないとした。
その他、今回の試算では10年の交通政策審議会で示したものと同様、リニア中央新幹線の利用料金を東海道新幹線「のぞみ」指定席の価格に700円を上乗せしたもので設定。ただ、こちらに関しても「便宜上仮置きしたもの」としており、具体的な運賃と料金体系は「開業が近づいた時点で決定」するとしている。
提供:建通新聞社