愛媛県と県内市町などの行政機関が連携し、県内の上水道・下水道・水資源政策3分野の課題解決に向け議論する「流域水マネジメント強化プロジェクトチーム会議」の2025年度初会合が松山市であった=写真。当日は、各機関からの照会結果に基づき抽出した「施設復旧の迅速化」と「関係機関との連携による支援協力体制の強化」の二つを主要な検討課題として設定。また、検討分野として「円滑な情報共有と連携体制の充実」「生活衛生への支援(給水・排水の継続)」「施設復旧への支援(運転管理・設計施工)」の三つを挙げ、今後分科会を設け検討することを確認した。
冒頭、主催事務局を代表して愛媛県の清水一博水資源・ダム政策監は、「四国地方の早い梅雨明けによる渇水の懸念や、人口減少による料金収入の減少など、水を取り巻くリスクが顕在化している」とした上で「安定的な水需給・水処理の確保が喫緊の課題。2回目となる今回の会議では、事前に把握した各市町の現状や課題について、特に自然災害時の危機管理体制の強化に関する課題解決の方向性について議論したい」などとあいさつ。
続いて次第に入り、事務局が5〜6月に各市町、水道企業団に照会した自然災害時における危機管理体制の強化のための取り組みの現状や課題などの回答結果を説明し、県への要望としてこれらの情報共有と応急復旧の迅速化などを挙げた。
照会結果を踏まえ事務局は、検討課題と検討分野の考え方を提示。検討課題については、上水道・下水道ともに施設復旧の迅速化が最大の課題であること、3分野ともに関係機関との連携強化や支援協力体制の強化が共通の意見交換希望事項であること、大規模自然災害を想定した事前の備えが必要であることなどを理由に、「施設復旧の迅速化」と「関係機関との連携による支援協力体制の強化」の二つを挙げた。
また、検討分野については「円滑な情報共有と連携体制の充実」「生活衛生への支援給水・排水の継続」「施設復旧への支援運転管理、設計、施工」の三つを挙げ、検討分野ごとに、災害時の対応と事前の対策、検討の方向性を提示。情報共有・連携体制については、災害時の対応として被害把握や支援ニーズの把握、渇水調整などの行動計画の実行を挙げ、事前の対策として連絡体制の確認や情報伝達訓練の実施、渇水タイムラインなどの行動計画の作成を提案した。生活衛生への支援については、災害時の対応として給水車の派遣や災害用井戸の活用、簡易トイレの設置などを挙げ、事前の対策として資機材の確保や優先給排水ルートの調整訓練の実施などを提案。施設復旧への支援については、災害時の対応として被災後の点検支援や運転支援、技術支援や資機材の施工支援を挙げ、事前の対策として資機材の確保や訓練の実施などを提案した。
今後は、市町と水道企業団に、三つの検討分野について検討の方向性と事前の対策の取り組みについて意見照会を行い、その結果を取りまとめ共有する考え。その後、各担当者を対象に分科会(対面または書面)を開催し、具体的な取り組み内容を検討し方針案を作成する。次回会議を年度内をめどに開催し、課題解決の方針案を議論・決定することにしている。
流域水マネジメント強化プロジェクトチームは、気候変動の影響による渇水の深刻化や能登半島地震といった大規模地震などの自然災害に備えるため、安定的な水需給・水処理の確保に向けた取り組み「流域水マネジメント」について、課題の抽出と解決を分野間で連携して行うことを目的に、今年2月に発足。上水道、下水道、水資源政策の3分野について、自然災害時の危機管理体制強化を最優先の検討課題とし、流域水マネジメントに関する各種施策の推進のための課題解決や県・市町・水道企業団間の情報共有などの連携体制の強化について検討する。会議と同分科会には、オブザーバーとして国土交通省四国地方整備局河川部をはじめ、県の防災危機管理課と技術企画室、市町の防災担当課などの責任者や担当者も課題に応じて参画している。
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建通新聞社