日本技術士会(黒ア靖介会長)の2025年度全国大会(熊本・九州沖縄)が10月25日から28日の4日間、熊本城ホールをメイン会場に開かれた。51回目となる今回は熊本で初めて開催され、全国から600人を超える会員、官公庁、企業、大学などの技術者が参加。「かたろう技術の未来×つなごう技術のチカラ」をテーマに記念講演や分科会による意見発表などが行われ、日々の研究成果を披露した。
1951年に設立された技術士会は、災害時の被害を軽減するための防災・減災技術の啓発や、工事監査支援や科学技術支援、地域産業の活性化支援などの活動を展開している。2025年3月末現在の正会員数は1万6313人で、建設をはじめ、上下水道、森林など21の部門がある。全国大会は北海道、東北、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州の八つの地域本部が持ち回りで担当し、毎年秋に開催している。
26日の大会式典で、同会九州本部の佐竹芳郎本部長は「未来社会の実現に向け、有益な技術交流の場となり、大きな成果に繋がることを期待している」と歓迎の挨拶を行い、黒ア会長は「分野を超えた知見を繋ぎ合わせることで、より強靭で持続可能な社会を築くことができる。一人ひとりが決意を新たにし、技術の力が結集する場となることを願う」と式辞を述べた。
来賓からは、松本洋平文部科学大臣(文部科学省の福井俊秀官房審議官代読)、九州農政局の緒方和之局長、九州経済産業局の星野光明局長(楠木真次部長代読)、九州地方整備局の垣下禎裕局長、熊本大学の小川久雄学長、木村敬県知事(亀崎直隆副知事代読)が祝辞を述べた。
垣下局長は「複合的な課題に的確に対応していく上で、高度な専門性と総合的な判断力を併せ持つ技術士の役割は益々重要になってくる」、木村知事は「高度な専門知識や豊富な実務経験、高い技術者倫理を兼ね備え、熊本で発生した災害に対しても多大なご尽力を頂いている」と述べた。
最後に九州本部の橋本智恵氏(熊本建設コンサルタント)が「多様化する課題に対し、専門技術と多角的な視点から持続可能な解決策を築き、よりよい市民社会の実現のため、公衆と真摯に向き合い説明責任を果たす」などを盛り込んだ大会宣言を読み上げた。
式典後は、第1〜4分科会がテーマに沿って実施した講演会やワークショップなどの取りまとめを報告。防災をテーマにする第1分科会では、国土交通省八代河川国道事務所の飯島直己所長が令和2年7月豪雨の復旧状況と球磨川の流域治水についての講演を行った。 第4分科会は、人材をテーマに意見発表を実施した。九州本部の仲田裕一郎氏(大進コンサルタント)は、人材育成における技術士の役割として「地域、企業、教育の架け橋となり、未来を切り拓く若者を育てることだ」と説いた。
記念講演では、九州大学名誉教授・熊本大学名誉教授の松田泰治氏が「熊本地震の教訓に学ぶ、更なる創造復興に向けて」と題して講義。熊本地震から得た教訓を振り返り、地域防災力の向上や、新たな社会経済動向を活かした創造的復興に向けた課題や探訪を探った。
提供:
西日本建設新聞社公式フェイスブックページ:「
記者 建設探訪」