トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建設経済新聞社
2025/11/07

【京都】吉村建設工業梶@3Dプリンターで現場施工 国内最大級の延長273m 場所打ち擁壁工など置換え

 吉村建設工業鰍ヘ6日、京都市発注の「(総合評価)3・3・5中山石見線道路改築(その22)工事」で進める建設用3Dプリンターによる現場施工の見学会を開催した。
 3Dプリンターは、3次元の設計データに基づいて、スライスされた2次元の層を1枚ずつ積み上げていくことで、立体モデルを製作する機械。建設分野で3Dプリンターの活用が拡大する中、今回はオンサイト「直接印刷」でつくる重力式擁壁と、笠コンクリート、集水桝などの施工に取り組んでおり、鰍oolyuse社製の3Dプリンター「Polyuse One」の実演が行われた。
 また建設業の働き方改革を後押しする「サテライト・オフィス・カー」の展示も行い、参加者の注目を集めた。
 − − − − − − 
 建設用3Dプリンターによる現場施工の見学会では、吉村建設工業鰍ゥら吉村成一取締役、現場代理人の波多野宏紀土木部課長ら、建設用3Dプリンターの開発を手がける鰍oolyuseの大岡航代表取締役が説明を行った。
 波多野氏は「この現場ではICT含め、AR(拡張現実)、3Dプリンターなどの活用、ドローンの映像を使った上空からの視点も取り入れた進捗管理も行っています」「3Dプリンターを用いて、場所打ち擁壁工を置き換えました。プレキャストカルバートの上部にも重力式擁壁の設置が必要になり、そちら等もすべて3Dプリンターに置き換えました」「アデムウォール工法では、1層ずつの材料が異なるため、先に3次元モデルを作成し、ARの拡張現実により、現場の使用材料の確認、過不足の確認を行いました。3次元モデルについては、民地境界の確認のほか、京都市にも示すことで合意形成を図りやすくなったり、イメージのすり合わせにも活用しています。またARを導入することで、今日のような見学会、学生のインターンシップ、地元説明会等でも活用しています。作業員に対しては、新規入場や施工手順の説明などで図示化したものを示し、現場に入っていただいています」などと解説。「使用している3Dプリンターは、3次元データとの互換性も良く、同じデータでの出力が可能となっています。将来的には作った3次元データをそのまま現場に直接造形するという夢のパーツが揃ってきています」などと述べた。
 京都市建設局の担当者らが中山石見線について「鋭意工事を進めており、その中の工事の一部として、吉村建設工業で工事を進めていただいています。建設DX推進のトップランナーとして最先端で先導していただいています。今回の見学会では、建設用3Dプリンターを用いたオンサイトプリンティング、現場で直接造形する実演を楽しみにしています」「一級河川善峰川をはさんで南北に分かれて工事を進めています。今回の工事が終わった後、善峰川を渡る橋梁の架設工事を行い、令和10年度完成目標で事業を進めています。吉村建設工業施工の中山石見線道路改築(その22)工事は、北側の橋台から現道まで約170m盛土を行い、スロープ状に施工していく内容。盛土の施工ではアデムウォール工法を採用しています。吉村建設工業の技術提案として、すべての擁壁を建設用3Dプリンターで造形しています。その他にもICT施工やCIM技術など様々な最新技術を採り入れながら施工が進められています」などと説明した。
 Polyuseの大岡代表取締役は「未来の建設現場においては、一人あたりの労働生産性を上げていかないといけない。建設用3Dプリンターは、未来の夢の技術ではなく、現実的に今、様々な公共事業で活用していただいています」「型枠大工の高齢化、人口減少の問題が大きくなっており、先延ばしできない、今やらなければいけないと考えています。建設用3Dプリンターは、建築や個人住宅のイメージが先行していますが、土木など公共事業の社会インフラをどれだけ安定的に保っていけるか、そこに強い危機感、ミッションを持っています」「建設用3Dプリンターは、省人化、工期の短縮、安全性の確保などで数値的効果について、在来工法と比較したうえで、総計で見て経済合理性があるか、そういったところが大事になってきます」「今年9月に量産型モデルとして、Polyuse Oneの設置を始めています」などと述べ、活用事例を紹介した。
 その後、建設用3Dプリンターを使用した擁壁工の現場などの見学が行われた。
 吉村取締役は「建設用3Dプリンターの今の立ち位置は、プレキャストと現場打ちの間を埋めるようなもの。現状では、現場で行うオンサイトは難しく、ニアサイト、オフサイトが最適解と思っています。最終的には施工の効率化というよりは、施工のあり方そのものを変えたいと思っています。難しいことが色々あると理解をしたうえで、今日のようなチャレンジをこれからも続けていきたい。オンサイトで構造物ができるようになると、省人化はもちろん、人が立ち入ることが難しいような災害現場などでも、マシンさえ現場に持っていけば施工がある程度できるということになれば、真の意味で建設業、ものづくりのやり方が変わるのではないか。それを期待して取組を行っている」などと述べた。
 見学会では、建設業の働き方を変える取組として、折畳みデスクと片側壁面チェアを収容し、ソーラーパネルを屋根に載せ、蓄電池も備え、衛星によるインターネットサービスのスターリンクを搭載し、〈移動×休憩×仕事〉が1台でこなせる「サテライト・オフィス・カー」(Sat−Office−Lite)(実用新案登録申請中)の展示も行われた。